新興SNS「エロー」の急成長が示す、
マーケティング本来のあり方

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米新興SNSのエロー(Ello)は、顧客データを商業利用する既存のソーシャルメディアに反旗を翻し、存在感を強めている。同社のマニフェストには、企業にソーシャルメディア・マーケティングの本来のあり方を考えさせる真摯な言葉が並ぶ。

 

 2014年9月、新興SNS「エロー」(Ello)が突如として注目を浴び始めた。8月の会員数はわずか90人だったが、現在では毎時3万人が入会していると報じられている(本記事執筆の9月26日時点。実名を強制するフェイスブックに反対する多くのLGBTQのユーザーが、匿名OKのエローへと一挙に移行したことも、注目を浴びた一因)。この新しいSNSを理解すべく、まずは同社のマニフェストを見てみよう。

皆さんのソーシャルネットワークは広告主に所有されています。

 皆さんが投稿するメッセージ、登録する友達、たどるリンクはすべて追跡・記録され、データ化されています。広告主はより多くの広告を露出させるために、皆さんのデータを購入しています。皆さんは、売買される商品なのです。

 もっとよいやり方があるはずです…(中略)…我々は、ソーシャルネットワークはエンパワーメントのツールになりえると確信しています。ユーザーをだましたり、強制したり、操ったりするツールではなく、人々をつなぎ、創造を促し、人生を祝福する場所なのです。

 この動きは、ソーシャルメディアのユーザーにとっては喜ばしいかもしれない。しかし広告でソーシャルメディアを活用する企業側の人間にとっては、もろ手を挙げて歓迎するわけにはいかないだろう。

 企業はエローの存在とそのマニフェストを警鐘ととらえ、顧客にリーチするためにSNSをどう使うかを再考すべきだ。このマニフェストが引き起こしている多大な関心と活発な議論は、人々がソーシャルネットワークに対して強い危惧を抱いていることの証しである。いまやソーシャルネットワークは、私たちの仕事や人間関係、生活でますます大きな位置を占めている。

 人々のこの不安はいくつかの現象から見て取れる。エローやディアスポラ(ユーザーが自分でサーバーを立ち上げてデータを保存できるSNS)への加入者の増加に加え、シークレットやワッツアップのような、匿名でプライベートな内容をやり取りするための、非永続型のプラットフォームが次々と現れている(英語記事)。また、「デジタルの足跡」を隠すための対策を講じているインターネット利用者も増えている(英語記事)。

 エローやその同類が、フェイスブックやツイッターなどの既存プレーヤーにとって大きな脅威となる日が来るとしても、それはしばらく先のことだろう。とはいえ企業は、広告主によるネット支配やアルゴリズム主導のユーザー体験に対して人々の不快感が高まっていることに、注意を払うべきだ。「ユーザーがソーシャルネットワークを無料で利用する代わりに、企業は顧客データを取得して広告を見てもらう」――すっかり定着しているこのやり方を、多くのインターネット利用者は不快に思っているからだ。いまこそ企業は、小手先のソーシャルメディア戦略を立てるのではなく、ソーシャルメディアの活用法を根本から見直す必要がある。

 つまり、フォロワー数やクリック数、メンションの数をひたすら増やそうとするのではなく、そもそもなぜ企業がソーシャルメディアを活用し始めたのかを考えるということだ。当初、ソーシャルネットワークは企業が顧客と直接的で継続的な関係を築き、顧客の要望に積極的に応え、責任ある対応が取れる手段として期待された。ところがふたを開けてみると、企業はソーシャル空間を旧来の広告仲介者(放送局、出版社、ジャーナリスト)が新たな顔ぶれ(SNS、ブロガー)にすり替わっただけと見なしたのだ。

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