「統合報告」が企業と投資家の
コミュニケーションを変える

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この数年、企業報告を世界標準化する取り組みが進んでいる。そこで注目されるのが、短期的な財務指標だけでなく、持続可能性や人的/知的資本なども含む包括的な企業価値を投資家に伝えようという「統合報告」(Integrated Reporting)だ。いまこの枠組みが必要な理由を先導者がみずから語る。本誌2014年12月号特集「投資家は敵か、味方か」関連記事。


 資本主義の抜本的な見直しが叫ばれている。声を上げているのは学者(マイケル・ポーター他)から政治家(アル・ゴア他)、投資家(カルパース〈カリフォルニア州職員退職年金基金〉等)、そして「オキュパイ・ウォールストリート」の活動家に至るまでさまざまな人々だ。

 それらの声には共通するメッセージがある。今日の資本主義のモデルは短期的な財務データを偏重し、持続的な価値創造の真の源泉を示す情報――イノベーション、ブランド・エクイティ、顧客ロイヤルティ、主要なステークホルダーとの関係性など――を無視している、というものだ。企業は報告書の公表をコンプライアンスの一環としか考えておらず、内容は定型文と法律の専門用語だらけというのが現状だ。結果として、巷には財務データばかりに焦点を当てた報告書やプレスリリース、アナリスト・レポートや記事が大量に出回っている一方で、企業報告の重要なポイントが見失われている。すなわち、企業が自社の価値を投資家に伝えることで、財務資本にアクセスできるようにするということだ。

 偏った企業報告のあり方が広く浸透した結果、企業は短期的な財務業績を重視し(それこそが投資家の関心対象であると信じているため)、長期的な価値創造をないがしろにしている。一方で投資家は、長期的な価値に関する知識の不足を、リスクプレミアムの上乗せによって補う。この結果、市場の評価は企業の実質的な成果や将来性を考慮しなくなり、市場における資本の配分は歪んだものとなる。そして投資家は企業の実態を把握しづらくなり、短期的な意思決定へと傾く。その代償を払うのは企業であり、資本調達のコストは膨らむ一方で、資本主義の欠陥を助長することになる。

 幸いなことに、価値創造の源泉を伝えるのにもっとよい手法がある――「統合報告」(Integrated Reporting:IR)である。これは、企業の財務業績に関する重要な情報、持続可能性に関する成果、そして知的/人的資本といった無形資産に関する情報を包括的に報告するというものだ。

 統合報告は投資家に対し、企業のビジネスモデルと戦略、リスクと成果、将来展望などについて、既存の企業報告では示されない知見を提供する。つまり、取締役会との対話や現在と将来の企業価値の評価に向けて、より包括的な根拠を提示することで、投資家の意思決定をサポートしてくれるのだ。これは財務的な安定にもつながるため、投資家の受益者や、より幅広い経済全般にも恩恵をもたらす。すでにダノン、SAP、アクゾノーベル、ユニリーバ等がこの報告手法を取り入れている。

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