【新連載】国際機関の動向とビジネスは
深く関わっている

1

現代企業には、利益を追求するだけの経済機関を超えて、社会の公器であることが求められる。もちろん「事業を通じて」という前提があるわけだが、公器としての使命を果たす機会を創り出せているのだろうか。企業の成長と社会への貢献を両立する事業機会、その解の見出し方の一つが、国際機関との「共創」にある。

国連からコンサルティングへ

 国際連合。もともとは「連合国」という名前のこの組織は、1945年に先の戦争が終わった時に、殺し合いに疲れた人類が二度と戦争をしないようにしようと誓い、高邁な理想に基づいて創られたものである。

田瀬 和夫
デロイト トーマツ コンサルティング
ディレクター

日本経済と国際機関・国際社会の「共創」をテーマに、企業の世界進出を支援し、人権デュー・デリジェンスをはじめとするグローバル基準の標準化、企業のサステナビリティ強化支援を手がける。1992年外務省に入省し、国連政策・人権人道・アフリカ開発・国際機関拠出金・人間の安全保障などを担当したのち、2004年に国際連合人道問題調整部人間の安全保障ユニット課長。大阪大学招聘教授。

 私はこの組織に2004年から2014年までキャリアの10年間を捧げ、自他ともに認める「正義の味方」として働いた。伝説の人である元国連難民高等弁務官の緒方貞子氏を直属の上司に持ち、「人間の安全保障」という新しい考え方のもと、極めて貧しい人々、暴力と紛争の中で希望をなくしている人々、そして洪水や地震で家族を失い傷ついた人々などに国際社会として手を差し伸べる現場で仕事をした。めくるめく日々であり、また充実した最高の年月だった。

 それがなぜいま、丸の内のどまんなかでコンサルティングファームのディレクターとして日本企業のサポートをしているのか。わからない人にはわかるまい。途上国の貧しいスラム街で地べたの人々と視線を合わせて考える立場から、傲慢と貪欲に溢れた経済の頂(いただき)から貧しい人々を見下ろす人間になってしまったと思う人もいるかもしれない。

 しかし、自分の中ではこの転機によって自らのキャリアの軸がブレているということはまったくない。むしろ、これまでやってきたことを別の角度からさらに飛躍させ、新たな知見と統合させ、強化するものでさえあると思っている。実のところ、いま現在私の日々は国連の頃よりもさらに魅力に溢れているし、何よりも、正しい。その理由を説明したい。

 

次のページ  公共セクターの概念×民間セクターの論理»
1
Special Topics PR
Game Changer 関連記事
最新号のご案内
定期購読
論文オンラインサービス
  • facebook
  • Twitter
  • RSS