老いてこそ輝く、中高年のイノベーターたち

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起業やイノベーションでは「若い力」こそ最大の武器だ、というイメージがある。しかしアメリカでは、若年層よりも中高年による起業のほうが成功率が高いという。創造欲と意義を強く持っているのは、むしろ後者なのだ。高齢化が進む日本にも示唆を与える事例と研究をお届けする。


 その昔、私の母が40歳になった時、我が家ではリビングに「安らかに眠る」と書いた紙の墓石を飾り、葬式に見立てたサプライズパーティーを冗談半分で開いた。いまにして思えばただの馬鹿馬鹿しいお遊びだが、当時の40歳は(全員ではないにせよ)いまの40歳よりも老いて見えたものだ。

 今日の社会でも、依然として中高年への偏見が存在する。特に雇用主たちは、テレビ番組「シャーク・タンク」(「マネーの虎」のアメリカ版)のレギュラー出演者ケビン・オリアリーが気に入らない起業志望者に対してよく言うセリフを、頭の中で何度となく発していることだろう――「もう用なしだ(You are dead to me.)」と。正直に言えば、おそらく大勢の人々がオリアリーに同意すると思う。「若くてハングリーな人材を探しています」というのが私たちの決まり文句だ。これは言外に、「若くなければ価値がない」と告げている。

 一方、発達心理学の権威であるエリク・エリクソンによれば、人間は歳を重ねるほどに、意義を追い求めることでより精力的になるという。彼の理論では、健康的な人間の幼児期から成熟期の過程を8つの発達段階に分類している。このうち第7段階(壮年期)に当たる40~64歳頃の年齢層は、停滞よりもむしろ、生産性や創造性が色濃い「次世代育成能力」(generativity:自分たちの後に続く世代を育成・支援しようという積極的な気持ち)を軸に展開する。人々はこの段階に到達すると「意義のある人生を送るにはどうすべきか?」と自問するようになり、自分のためだけでなく他者のために価値を生み出そうという目的意識を強く抱くそうだ。

 中年に差し掛かると創造性が加速することを裏付ける、事例や実証データは豊富にある。2013年の「注目すべき40歳以上の女性40人」(英語サイト)の1人に名を連ねた、シェリル・ケロンド(43歳)を例に挙げよう。彼女はGPS付きスポーツウォッチの製造販売を行うビア・スポーツ(Bia Sport)を創業した。時間や心拍数を記録してオンライン上のプロファイルに送信する〈ビア・ウォッチ〉は女性に優しい設計となっており、1人でも安心して運動できるように非常通報ボタンも装備されている。従来の方法による資金調達ができなかったので、ケロンドはクラウドファンディングサイトのキックスターターで初期の資金40万8000ドルを確保した。きわめてクリエイティブな方法だ。

 もう1人、リンダ・エイビーも紹介しよう。彼女は46歳の時、個人向けに遺伝情報の解析サービスを提供する会社、23andMeの共同創設者となった。そして53歳になると再び起業に挑戦し、キュリアス(Curious)を立ち上げた。同社は健康に関する情報を集約・共有化し、一般ユーザーに向け健康相談のツールを提供している。

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