キャッシュフローに見るアマゾンの真の優位

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アマゾンの業績鈍化や、それでも維持されている優位をめぐってはさまざまな要因が取沙汰される。HBRエディターのジャスティン・フォックスは同社の強みの源泉として、卓越した「キャッシュ・コンバージョン・サイクル」に着目する。

 

 あと数日のうちに、アマゾンが四半期決算を発表する。ここ最近の四半期の推移を参考にするならば、今回も利益はごくわずか、あるいはマイナスにさえなると思われ、発表の前後には懸念の声が高まるはずだ(注:本記事執筆後の2014年10月23日に発表された第3四半期の決算は、4億3700万ドルの赤字となった)。アマゾン株の下落がこれ以上続けば、「ずっと低いままの利益率に対して投資家たちはいら立っている」とする説が聞かれるようになるだろう。

 それも正しいのかもしれない。株価の短期的な値動きについてはいまだ解明されていないことも多く、この記事でその謎に迫ろうとは思わない。しかし、アマゾンの利益率が低いのはいまに始まったことではないわけで、今回に限ってそれが問題になるのは不可解だ。

 アマゾンの決算報告で、利益率の低さよりもはるかに興味深いことがある。それはキャッシュフロー計算書に見られる。以下は、過去10年における同社の純利益とキャッシュフローの推移である。

 青い線と黒い線の差には、投資が大きく関係している。建物や設備、その他もろもろへの投資は損益計算書に記載されるが、営業キャッシュフローには計上されない。世界規模で小売業を支配するために膨大な金額を投資に回してきたアマゾンの場合、営業キャッシュフローが純利益を上回っているのは不思議ではない。しかしその違いの大きさ、そしてキャッシュフローのグラフの急角度には驚かされる。

 フリー・キャッシュフローには、投資のすべてが計上される(ただし計上されるのは支払い時で、その後の減価償却や分割返済は含まれない)。アマゾンのフリー・キャッシュフローが純利益を継続的に(多くの場合10億ドル以上)上回っているのは驚異的であり、非常に重要である。そして両者の差はすべて、タイミングに由来している。

 純利益は、支出と収入のタイミングの不一致に対して寛容である。たとえばあなたが、今後12カ月にわたって提供されるサービスを販売するとしよう。現金がだれの元に移ろうと、支出と収入はその12カ月間の中で計上される。あるいは本を販売しているなら、買い手からの売上げと版元への支出は同じ四半期に計上される。たとえ実際の支払いが同じ四半期内に発生しなくてもである。

 一方フリー・キャッシュフローの場合、現金が実際に移動した時にはじめて計上される。したがって、ある事業において、顧客が迅速に支払い、在庫が巧みに管理され、サプライヤーへの支払いに時間的余裕を持てるならば、たとえ純利益がマイナスでもフリー・キャッシュフローはプラスに保つことができる。これこそ、ジェフ・ベゾスとアマゾン経営陣が過去10年で築いてきたビジネスに他ならない。

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