「先延ばし」を成果につなげる時間管理術

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作業の締め切りを延長しても、往々にして最終的な成果は向上せず時間だけが無駄になる。それはなぜか。失敗しない先延ばしの方法を、モチベーションと認知バイアスの観点からハルバーソンが説明する。


 オバマ政権は2013年6月、50人以上のフルタイム従業員を抱える雇用主に健康保険の提供を義務づける発効日を丸1年延期した(2014年1月から2015年1月に延期)。たしかに、医療保険制度改革法(Affordable Care Act、通称オバマケア)のように複雑な制度の導入には時間がかかるのが当然で、担当者たちは政府が定めた期限に間に合わせようと奮闘してきただろう。今回、少なくともオバマケアのこの部分については、適切に施行するための準備期間があと1年与えられたわけだ(訳注:2014年2月、従業員50~99人の中小企業に対してはさらに1年延期され2016年1月の発効となった)。これはよいことのようにも思えるが、実際はどうなのだろう。

 締め切りの猶予をもらった担当者たちは現在、どの程度奮闘しているだろうか。いまでも夜遅くまで必死で働いているのか、それとも「一息入れよう。時間はたっぷりある」とつぶやいているだろうか。

 期限を延ばせば、最初のうちは安堵感を覚えるがやがてはそれも消える。そのあとに待ち受けているのは何だろう。研究によれば、私たちは延期によってもたらされた時間を賢く使うのがとても苦手のようである。猶予された1週間、1カ月、あるいは1年が過ぎた時、重要な目標を達成できておらず、結局は以前とまったく同じ問題――時間のプレッシャー、ストレス、準備不足――に直面してしまうのだ。

 なぜ私たちは、せっかく延長された時間を無駄にしてしまうのか。どうすればそれに対処できるのか。2つ目の疑問に答えるには、まず最初の疑問を紐解く必要がある。

問題①:モチベーションを失ってしまう

 目標へのモチベーションは、目標達成までの距離が縮まるにつれて高まっていく――この現象を最初に発見したのは、20世紀初頭の研究者たちである。売上目標の達成を目指す営業担当者も、チーズを目当てにトンネルを走りまわるネズミも、目標に近づくにつれていっそう努力するようになる。ほとんど無意識のうちに働くこのメカニズムを、心理学者は「ゴールが大きく立ち現れる効果(Goal Looms Larger Effect)」と呼んでいる。目標達成に近づくにつれて、ゴールの存在が意識の中でどんどん大きくなり、思考と注意力を支配するようになるのだ。

 期限を延ばすということは、ゴールまでの距離をふたたび長くすることである。すると、より喫緊の目標のほうが大きく見えるようになり、最初の目標は頭の隅に追いやられてしまうのだ。

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