豪雨のなか進むべきか、それとも留まるべきか
極限の訓練環境で鍛えられるリーダーの判断力
――JAXA宇宙飛行士・油井亀美也

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自衛隊出身者初の宇宙飛行士として、大きな話題を呼ぶ油井亀美也氏。宇宙飛行士の訓練の厳しさは有名だが、油井氏も体験の体験をしている。岩砂漠を歩き、カヌーで川を渡る過酷な訓練では、豪雨に見舞われることとなった。リーダーとして難しい判断が迫られたとき、いかにして決断を下したのか。極限の環境下で学んだリーダーシップとは。油井氏のインタビューは最終回。(構成/新田匡央)
 

訓練時代の異名は「サメ」

――油井さんは宇宙飛行士の訓練時に「サメ」という異名があったと聞きました。どのような経緯でつけられたのですか。

油井 亀美也(ゆい・きみや)
JAXA宇宙飛行士
1970年、長野県生まれ。1992年、防衛大学校理工学専攻卒業後、防衛庁(現防衛省)航空自衛隊入隊。2008年、防衛省航空幕僚監部に所属。2009年、宇宙航空研究開発機構(JAXA)より国際宇宙ステーション(ISS)に搭乗する日本人宇宙飛行士の候補者として選抜され、同年、JAXA入社。2011年にISS搭乗宇宙飛行士として認定され、2012年10月、ISS第44次/第45次長期滞在クルーのフライトエンジニアに任命された。

PHOTOGRAPHY: JAXA

油井亀美也(以下略) メンバーそれぞれにニックネームをつけることになり、その経緯の詳細はメンバー以外に教えてはいけないことになっています(笑)。簡単に言うと、メンバーそれぞれが持っている特徴的なエピソードを共有して総合的に決めます。私が入った2009年のクラスでは、「彼はこれがいいんじゃないかな」「彼女はこれだ」とお酒を飲みながら決まりました。私は「シャーク」(鮫)のようだと言われ、日本語で「サメ」と決まりました。

 そもそも、私は性格的にも誰かをサポートしているほうが性に合っています。当初は、フォローはしてくれるけどリーダーシップはあまり発揮しない、というのがグループ内での評価だったと思います。ところが、訓練ではリーダーシップを発揮しなければならない場面が必ずやってきます。そのときの姿を見て「自衛隊から来ているだけあるな」と感じてくれたのが「サメ」という表現につながったのかもしれませんね。

――宇宙飛行士の訓練環境にはすぐに馴染めましたか。

 少しずつ鍛えられていったと思います。私は、どうあってもその状況を乗り越えなければならないのであれば、楽しまないと損だと考えています。楽しくなければ、楽しくする方法を探そうとします。

 最も大きなハードルになったのはロシア語です。最初はロシア語が嫌いで、授業に行っても何もわからず、先生と顔を見合わせているだけで何も話せなかったので本当に大変でした。このままでは進歩しない思い、好きになる方法を見つけようとしました。本を見て勉強をするのは嫌いなので、友人をつくってスカイプで話をしたり、映画を見たり、音楽を聞いたりすることから始めました。

 ただ、宇宙飛行士は忙しい職業なので、なかなか十分な時間が取れません。そこでひと工夫しました。体を鍛えるために運動は毎日しなければならないので、運動をしながら勉強をしてみようと考えたのです。ところが、走りながら勉強するのは思いのほか難しかったので、持久力系の運動をバイクに変えました。バイクをこぎながらメールを書いたり映画を見たり、2時間運動をすれば2時間ロシア語の勉強ができるようになります。体はきついですが、メールを書いたり、映画を見たりするのは楽しかったので、つらい運動とロシア語の勉強があっという間に終わるという副産物が生まれたんですよ。

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