困難なことであっても
正しいことをする勇気を持て

「外資だからできる」というまやかし

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1990年代前半、P&Gジャパンの業績は横ばいだった。次の成長に向けてリーダーシップを発揮したのは、後にP&GのCEOに就任するボブ・マクドナルド氏である。一時的な売上げ減を覚悟したうえで、同氏は流通改革の大ナタを振るった。並行して、さまざまな部門で大規模な改革を推進し、人事や組織の面でも抜本的な改革が実行に移された。約3割の人員が削減され、コスト削減分の資金は戦略的な分野に投資された。こうして、P&Gジャパンは2000年代に急成長を遂げる。

売上げが減っても正しいことを実行する
リーダーの覚悟が改革の成否を分ける

 1990年代前半、P&Gジャパンの業績は踊り場を迎えていた。90年代半ば、困難な状況を打開するという使命を負って、ボブ・マクドナルド氏はP&Gジャパン社長に就任した。

 私は98年に、マクドナルド氏の求めに応じてP&Gジャパンにやって来た。その後、マクドナルド氏の下で、新しいビジョンと戦略の策定に参画した。その内容については、前回述べた。ごく簡単にまとめると、消費者理解に基づき、イノベーションで勝つということ。勝つための戦略を実行するため、必要な組織や人材の能力を育てる必要があった。

 戦略が決まれば徹底して取り組むのがP&Gのスタイルだ。改革に聖域はない。

 たとえば、後にP&Gジャパン社長に就任し、現在はP&Gアジア統括責任者を務める桐山一憲氏が中心的な役割を担った流通改革がある。その準備は私の着任前から始まっていた。

 新取引制度の大きな二つの柱がトランスペアレント・プライシングとECR(Efficient Consumer Response)である。トランスペアレント・プライシングは透明性のある取引制度である。そしてECRで、従来のプロモーションや値下げによるプッシュ型のやり方をやめて、マーケティング活動で消費者に直接商品の価値を理解させることによるプル型の売り方に変更した。

 この新取引制度は、販促リベートを廃止して卸値を一本化するというもの。日本の商習慣に根付いた販促リベートの廃止は、問屋など取引先からの反発が予想された。しかし、その不透明さがメーカーに対する不公平感、不信感の土壌になっている。思い切った改革が売上げの減少を招くであろうことを承知したうえで、マクドナルド氏はやれと言った。

 彼がよく言っていた言葉がある。

“We have to have a courage to do harder right than easier wrong.”

 困難なことであっても、正しいことをする勇気を持て。マクドナルド氏はその通りに行動した。

 予想通りというべきか、売上げは1割ほど減少した。1~2年の間は、苦しい時期を味わった。それでも、正しい戦略を貫いた結果、やがてV字回復を果たしP&Gジャパンは新たな成長のステージを迎える。

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