データから顧客インサイトは見えない

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IMCの父と言われるドン・シュルツ教授にインテグレートの藤田康人氏がインタビュー2回目。いまマーケターに必要にスキルは何か。そして、マーケティング組織のあり方は?

 

これからのマーケターに必要な3つの資質

藤田:日本では今、一部で「データサイエンティスト」と呼ばれる存在の必要性が叫ばれていますが、私自身はそういう職務の人だけがいても、なかなかインサイトが見えてこないのではないかと考えています。

藤田 康人氏
(ふじた・やすと)
インテグレート代表取締役CEO。 1964年東京都生まれ。慶應義塾大学を卒業後、味の素株式会社に入社。1992年、ザイロフィンファーイースト社(現ダニスコジャパン)を、フィンランド人の社長と2人で設立。1997年にキシリトールを日本に初めて導入し、同市場を確立した。2007年5月、IMCプランニングを実践する日本初のプランニングブティックとしてインテグレートを設立。近著に『THE REAL MARKETING-売れ続ける仕組みの本質』(宣伝会議)。

 彼らはマーケターではないので、データ分析はできても、そこから真の意味でのインサイトを導き出すのは難しいのではないかと。データサイエンティストという職名だけが独り歩きをしているような状況は、少し残念に思うのですが、そのあたりはどうお考えですか?

シュルツ:まったくその通りだと思います。プラットフォームを整備して、データを一元化するのはそうした人に任せられると思いますが、ではそこからどうやったらインサイトを得るのか、というのはまた別の課題です。

 これまでも何年にもわたって、企業はデータを集めてそれを分析し、マーケティングに役立てようとしてきました。しかし、データからインサイトを導くことは未だにできていません。

 つまり今、こういったデータを駆使してインサイトを得ることができる人材が決定的に欠落しているのです。最近シンガポールを訪れ、名だたる企業を視察しましたが、そういったところでもやはりインサイトを導き出せる人材が不足しているのが事実です。我々の大学でも教えるカリキュラムはありますが、これに関しては勉強したりトレーニングしたりするのがすごく難しい。環境が急速に変化する中で、人のインサイトを把握するのは、技術的にというよりもそれをみる人の資質の問題が大きいからです。

藤田:そのようなインサイトの把握は、やはりマーケターがすべきと?

シュルツ:それは、そう思います。しかし、我々の大学でもそうですが、スペシャリストとしてではなく、ジェネラリストとしてのマーケターを育てることが大事だと考えています。例えば、Twitterなどのソーシャルメディアにすごく詳しいとか、ときには特化した知見は必要かもしれませんが、しかし消費者としてはいろんなメディアにアクセスしているので、部分的なスペシャリストでは足りませんよね。

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ドン・シュルツ氏

 ですので、消費者の絶対的なインサイトを導き出すには、マーケティング全体を理解しているジェネラリストの視点がまず前提になります。その上で、次の3つの資質が必要だと思います。ひとつは、さまざまな物事に対して好奇心旺盛であること。2つ目に、既存のマーケティングの世界で十分活躍できる有能さを持ち合わせていること。そして、“data-literated”であること。つまり、データが何を意味するのかを理解する能力が必要だということです。これは特に訓練が難しいですが、欠かせない点です。

 

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