欧米企業はいまなぜ、
企業内の信頼関係に注目するのか

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個々の役割が厳密に定められている欧米企業において、とりわけ業績好調なグローバル企業でなぜいま、垣根を越えた協力関係が求められているのか。翻って日本は、かつてのような阿吽の呼吸を失った後で、どのように信頼関係を根づかせていくべきか。新刊『組織が動くシンプルな6つの原則』(ダイヤモンド社)を著したボストン コンサルティング グループに聞いた。 

日本企業は欧米企業よりも信頼関係が薄い?

編集部(以下色文字):欧米企業の間でいま、協力関係の大切さに改めて注目が集まっていると聞きました。とりわけグローバル・エクセレント・カンパニーが、あえて「協働」に舵を切ったのはなぜでしょうか。 

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重竹 尚基(しげたけ・なおき)
BCG東京オフィス シニア・パートナー&マネージング・ディレクター。早稲田大学政治経済学部卒業。米シカゴ大学経営学修士(MBA)。三井物産、BCGロンドン・オフィスを経て現在に至る。エネルギー、商社、産業財企業などを中心に、組織改革、グループマネジメントなどをテーマとしたコンサルティングを数多く手掛ける。監訳書に『BCG流 成長へのイノベーション戦略』(監訳、武田ランダムハウスジャパン)

重竹(以下略):元々、欧米企業の組織は各人の役割が極めて明確であり、協力関係が生まれにくい構造にありました。たとえば、6つ並んだ計器の前に6人の担当者がいたとすると、ひとつの計器でどんなにひどいトラブルが起こっても、隣の計器の担当者が手を貸すことは許されません。なぜなら、手を貸した瞬間に自分の持ち場がおろそかになり、そこでトラブルが起こる可能性があるからです。つまり、トラブルが起こった計器は、そこだけで解決するのが全体最適とみなされる。個人レベルまでやるべきことが明確で、定められたこと以外はやってはいけないのです。

 こうしたベースがある中で、『組織が動くシンプルな6つの原則』で示されたような「協働」「助け合い」という概念を積極的に取り入れ、一段高いパフォーマンスを実現しているグローバル企業が出てきている。これはすごいことではないでしょうか。日本人によくある「仲間うちの暗黙の協力」とはまったく違う性質のものではないかと、私は興味を持ちました。 

 役割を厳密化することは、個別最適を徹底するということです。徹底した個別最適の総和が全体最適という考えに基づいています。そうした徹底した個別最適の集合体である組織がもし効果的に協働できたら、それはとても強力な組織になるのではないでしょうか。

 協働の背景にあるのは、信頼関係です。冒頭の例のようなやり方を続けていても、組織に信頼関係は構築されません。信頼関係に基づいた組織が最も強いということに、多くの企業が気づいたからだと思います。本書の著者イヴ・モリューも、ある一定のポジションにいる人が信頼感でつながれた組織が最も強いと言っています。

 日本人の感覚からすれば、昔から「現場の協力」という概念があり、さして珍しく思えないかもしれません。しかし昨今、信頼に基づく協力は失われているのではないでしょうか。中途半端な成果主義のせいで、組織の壁が厚くなり、タコ壺化している。仮に協力関係があったとしても、それができる人はできる、できない人はできないという俗人的なものになっています。

――かつては独身寮や社員旅行など、インフォーマルなネットワークがありましたね。いまは採用形態も多様ですし、他部門の人と知り合う機会も少なくなっているかと思います。BCGには、そうしたネットワークがあるのですか。

 BCGでは例えばワールドワイドのパートナー間で信頼をベースとしたネットワークを構築しようと、多大な時間とお金をかけています。たとえば、年に2回ほど1週間かけてパートナー全員が集まる「役員会議」があります。しかし、実際の会議は最終日の1時間ぐらいで、残りの大半は別のことに時間が費やされているのです。それぞれのパートナーがどのような課題をどのように解決したかを分かち合い、それを踏まえてお互いが有効に協力するためにネットワークを構築する、つまり、より濃密な人間関係にするための情報共有や社交がメインなのです。

 一度このような関係を築いておけば、その後に自分が経験したことのない課題に直面したとき、グローバルに散らばる人々の経験や知恵を借りやすくなるというわけです。組織に必要なのは、社内政治を超えた信頼ベースのネットワークがあることなのです。

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