ブレーンストーミングの欠点を補う
ブレーンライティング

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アイデア出しと言えばブレーンストーミングが有名だ。しかし、これには立場の強い人や話好きの人が場を独占してしまうリスクがあった。ケロッグ・スクールのリー・トンプソン教授は、健全な対立の効果や、ブレーンストーミングの欠点を補う「ブレーンライティング」の効用を示す。本誌2014年11月号「創造性vs.生産性」関連記事、第3回。


サラ・グリーン(HBRエディター) ノースウェスタン大学ケロッグ・スクール・オブ・マネジメントの教授で、Creative Conspiracy: The New Rules of Breakthrough Collaboration (未訳)の著者、リー・トンプソン氏にお話を伺います。御著書では、直感に反するような驚くべき研究結果を用いて、創造性の聖域に切り込み、うまく創造力を高めるやり方を紹介されていますね。とりわけ私が興味を持ったのは、「不信感」が創造的認知をかき立てるという点です。言い換えると、強い信頼関係で結ばれたチームは創造性が低くなるということでしょうか。この点について解説してもらえますか。

リー・トンプソン この理論は、ケルン大学の研究グループが近年発表した研究論文に基づいています。興味深いことに彼らは、不信感には2つの作用があると説明しています。

 1つには、不信感を抱いている人や、チームを信頼していないメンバーは、人前で意見を述べることを極端に嫌がることがあります。なぜなら、「意味がわからない」とか「その考えは信用できない」といった否定的な反応が返ってくるかもしれない、と考えるからです。相手が自分を陥れようとするかもしれないから注意しなければ、と警戒するあまり、自分の考えを取捨選択して「自己検閲」をしてしまい、創造性が阻害されるのです。

 一方、ケルン大学の研究によると、無意識のうちに脳が情報を処理する認知レベルでは、人間は問題に対して自明ではない(ありふれていない、創造的な)答えを素早く考え始めるそうです。そして、不信感や疑念を抱いている場合、疑わしいと思われる答えに対する代替案を考え始めるのです。自分ならばこうする、というように。

 私自身もこのことを理解するには時間がかかりました。しかし研究者らは一連の実験で、人間は「社会的な状況」(グループでのアイデア出しなど、他者とのやり取りが行われる状況)で不信感を抱くと、創造性が阻害されるということを明らかにしています。そのような状況では、物事を慎重に考えて、後悔がないよう安全策を取ることが優先されがちだからです。ところが、「個人的な状況」――考えたアイデアが他者には公開されないとわかっている状況では、不信感が潜在的にプラスに働くのです。

 つまり不信感は、無意識な情報処理の段階では、創造性を高めるのです。賢明なリーダーなら、この効果を有効に活用できるかもしれません。たとえば個々のチームメンバーにまずプライバシーが保たれた状況でアイデアを考えさせ、その後にチームの信頼関係を築いたうえで、各自のアイデアを発表させるなどです。

グリーン なるほど。これに関連して、著書の中で取り上げられている、「対立」の役割に関する研究についてお尋ねします。不信感と同じように、対立も創造性を阻害する要因だと思っていましたが、時には対立が好ましい結果をもたらすようですね。

トンプソン その通りです。対立にも面白い側面があり、チームにとってだけではなく、交渉や創造性にとっても「双頭の動物」のようなものなのです。対立は、陰口や過度な論争、中傷などを引き起こし、チームを崩壊に導くことがあります。これは悪いタイプの対立で、人格攻撃を伴うため「人格的な対立」とも呼ばれます。

 かたや好ましいタイプの対立は「認知的な葛藤」としても知られており、いわゆる科学者のような振る舞いのことを指します。つまり、ある問題について激しく議論するが、相手の意図や人格までは攻撃しないのです。集団浅慮やチーム内の思考の同質化を防ぐには、何らかの対立をつくり出すしかないと、そう結論づける研究は経営科学の分野でもたくさんあります。交渉についても同じことがいえます。

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