“How might we ...”言葉で変える
IDEO流 創造的文化のつくり方

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本誌2014年11月号(10月10日発売)の特集は、「創造性vs.生産性」。ピクサーIDEOカルビーなどの事例を通して、一見相容れないようにも思える2つの課題を考察する。HBR.ORGの関連記事第1回は、世界最高峰のクリエイティブ集団IDEOに根づく創造的文化について。創業者と共同経営者みずから、「肯定的な言葉を使うこと」の重要性を語る。

 

 言葉は思考の結晶である。しかし、言葉はそれを使う者の思考パターンを反映するだけでなく、思考そのものを形成する。何を、どのように言うかは企業の文化に深く影響を及ぼしうる。従業員の態度と行動を変えたければ、まずは社内での言葉の使い方を変えるとよい。イノベーションを誘発したければ、新しいアイデアをめぐる会話に変化を与えてみるとよい。

 我々のデザイン・コンサルティング会社IDEO(アイディオ)は数年前に、ジム・ウィルテンスのワークショップを主催したことがある。彼はアウトドア活動家で著述家、冒険旅行家、講演家でもある。また、カリフォルニア北部の学校で、才気あふれる子どもたちにリーダーシップ、記憶力、創造性を高める独自のプログラムを教えている。ジムはプログラムのなかで、ポジティブな言葉が持つ力を強調し、みずから範を示している。彼の口から「できない」という言葉を聞くことはまずない。代わりに、不可能性よりも可能性を強調した、より建設的な表現――「もし~すれば、できる(I could if I ...)」――などの言い方を用いる。実際に、ジム自身が「できない」と言うのを耳にした生徒には100ドル払うと約束しているほどだ。

 ジムの手法は大人にはちょっと単純すぎる、と思われるだろうか。しかし、そう決めつけるのは早計だ。キャシー・ブラックがハースト・マガジンズの社長に就任した時(在任期間は1996~2010年)、社内におけるネガティブな言葉遣いが、新しいアイデアを阻害する環境を醸成していることに気づいた。幹部たちの間で否定的な物言いが蔓延していることを、同社に近い関係者が報告したのだ。そこでブラックは幹部たちに対し、「それはすでに試したことがあります」とか「それは絶対にうまくいきませんよ」などというセリフを口にしたら、その都度10ドルを徴収すると宣言した(企業幹部と教師の、やり方の違いに目を向けていただきたい。ブラックが罰金を課したのは自分自身ではなく、他者であった)。もちろん、ハーストのマネジャーたちにとって10ドルは微々たる金額であったが、同僚の面前で恥をかくことなど誰も望まないはずだ。

 ブラックはこの規則をほんの数回実行に移しただけで、否定的な表現を職場の会話から一掃することに成功した。肯定的な言葉遣いは、会議の空気を変えただけにとどまらず、もっと幅広い影響を及ぼしたのかもしれない。ブラックの社長在任中、出版業界にとってきわめて厳しい時期であったにもかかわらず、ハーストは『コスモポリタン』を含む主力媒体を健全に保つことができ、しかもオプラ・ウィンフリーの『オプラ・マガジン』といった新雑誌を創刊し大ヒットさせた。そしてブラックはアメリカのビジネス界で最も有力な女性の1人となった。

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