Special Report

アナリティクス競争元年

ダイヤモンド・マネジメント・フォーラム2014

2000年代半ば、グーグルやイーベイなどのインターネットを基盤とした企業やソーシャル・ネットワーキング企業が、企業外部で生み出される新たな種類の情報を蓄積・分析し始めた。ビッグデータ時代の到来である。そしていま、アナリティクスを活用し、より価値のある製品やサービスを提供する企業が現れている。この大きな変化がビジネスに及ぼす影響とその対応について、ITとソーシャルメディア研究の第一人者である國領二郎氏や、先進企業の分析のエキスパートたちが検証した。 

個客とつながる「見える経済」で
ビジネスモデルが変わっていく

 IT化とソーシャルメディアの登場によって、刻々とビジネスモデルが変わっていく。渦中にあると自覚しにくいが、我々は、歴史の転換点にいるようだ。

慶應義塾 常任理事
慶應義塾大学
総合政策学部
教授
國領二郎氏

 それについて慶應義塾大学の國領二郎教授は、「お金と引き換えに物の所有権が移転するモデルでは、企業と顧客の関係は他人同士の刹那、言わば『見えない経済』だが、両者がネットワークでつながることで『見える経済』となる。すなわち『見える個客』への継続サービスモデルが台頭する可能性がある」と言う。

 たとえば、電子書籍のプラットフォーム提供企業は、ユーザーの読書状況を把握できるので、読み終わった後に課金することが可能である。また、1冊ダウンロードするのではなく、読んだぶんだけ課金することが可能になる。そこで重要になる概念として、國領教授は「共」を挙げる。

「カーシェアリングや音楽配信、動画配信などは、所有権が事業者にあり、会員は定額でサービスを利用できるシステムだ。我々はパブリックとプライベートの二項対立で考えがちだが、その間に仲間だけのソーシャルがある。仲間に入れてもらいサービスを付託されるかどうかが、これからのビジネスを制する決め手になる」と、ビジネスモデルの今後について解説した。

アバナード  山中理惠氏

 國領氏の指摘を受けて、アバナードの山中理惠氏は、「モバイル端末は世界に150億台あり、2020年には5000億台になるといわれている。本格的なモビリティの時代には、ソーシャル、モバイル、クラウド、データ&アナリティクスという4つのテクノロジーが結び付くと、企業のビジネスシステムを変革する大きな力になる。企業にとって重要なのは、デジタル化が進行するなか単体で戦略を考えるのではなく、4つを組み合わせた絵柄を考え、仕事のやり方や経営戦略を変えていくことだ」と主張した。

アナリティクスに強い経営が
ビジネスの可能性を広げる

 企業におけるビッグデータの活用は模索が始まったばかりであるが、先進企業はどのようにアナリティクスを使い、どのような効果を上げているのだろうか。

グーグル  小林伸一郎氏

 グーグルで広告効果の分析・提言をしている小林伸一郎氏は、「データをマーケティングで使うには、厳しい制約がある」と前置きしたうえで、次のように指摘した。「広告効果は『通信簿』になりがちで、広告主はお金を払っているのだから良い結果を聞きたい。とはいえ効果が出ないケースもあり、そういう時は正直に報告し、理由を共に考えるようにしている。不都合なデータを隠さないことが、データの利活用を進化させる基本であることを忘れてはならない」。

日産自動車 高橋直樹氏

 データ分析結果に求める「正解」は企業によって違う。日産自動車の高橋直樹氏は、「いくら精度が高い予測ができたとしても、その結果に基づくアクションが、その企業が取るべき戦略と異なるのであれば、それは間違った分析と考えるべき。弊社では、分析結果に基づいてどのような判断やアクションができるようにするのかをまずデザインしたうえで、分析の設計に取り掛かるようにしている。そうすることでアナリティクスによって企業を望ましい方向に引っ張っていくことができる」と、自身の経験からアナリティクスの貢献のあり方を語った。

ヤフー 安宅和人氏

 さらに、ヤフーの経営に携わる安宅和人氏による提言に、聴衆は耳を傾けた。「データを活用すればリスクが低下する、まともな判断ができるという事実を共有し、文化にすることが重要だ。ただし、データがあれば何でもできるわけではない。下流のアシストには有効でも、上流で価値を生み出していくには無力に近いといってよい。情報処理のプロがいて、正しい方向性を示さないと、危険な方向へ進む可能性が高い」。

IMD 高津尚志氏

 アナリティクスのエキスパート3人の発言を受けて、IMDの高津尚志氏は、「アナリティクスは過去や近い未来を予測する際にかなりの精度を発揮するが、それだけでは近視眼的になってしまう。経営に活用するには思想が必要ということだ」とパネルディスカッションを総括した。

アクセンチュア
加治慶光氏

 最後にアクセンチュアの加治慶光氏が登壇し、トーマス・H・ダベンポートが提唱する「アナリティクス3.0」やフィリップ・コトラーの著作『マーケティング3.0』に登場する3つのパラドクスを解説。そのうえで、世界でもまれに見る人口減少、一極集中、高齢化を挙げ、日本が抱えるこれらの課題に対し、政府や地方、大学、個人が地方活性化に向けて取り組んでいるプロジェクト事例を紹介した。

 そして、「日本各地には大きなビジネスチャンスにつながる可能性が埋もれている。企業組織に問われているのは、何を信じ、何を成し遂げたいかであり、物事の本質的価値の追求、芯に迫る覚悟と行動が求められている」と講演を締めくくった。 

《Program》

【基調講演】
「見える経済」のビジネスモデル
慶應義塾大学 常任理事
慶應義塾大学 総合政策学部 教授

国領二郎

【特別講演
モバイルとクラウドがあらゆるプロセスを変える
――デジタルが拓く新たなITの可能性
アバナード ビジネスデベロップメント シニアディレクター
山中理惠

【パネルディスカッション】
アナリティクスに強い経営のあり方
IMD 日本代表
高津尚志
ヤフー チーフストラテジーオフィサー
安宅和人
グーグル マーケットインサイト ジャパン
アドバタイジングリサーチ統括部長

小林伸一郎
日産自動車 コーポレート市場情報統括本部 エキスパートリーダー
高橋直樹

【特別講演】
ビッグデータ時代の新しいビジネスの可能性
アクセンチュア チーフ・マーケティング・イノベーター
加治慶光

[制作/ダイヤモンド社クロスメディア事業局]

 

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