イノベーションは消費者から生まれる
日本企業は組織のサイロ化を解消せよ

ブランド論の大家、デービッド A. アーカーが「ワールド・マーケティング・サミット 2014」のために来日した。最新刊『ブランド論』の発売を記念して、『DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー』編集部が単独インタビューを実施。ブランドのサブ・カテゴリーをつくるための3つの方法と、そのために日本企業が乗り越えるべき課題が語られる。(構成/加藤年男)

新しいサブ・カテゴリーをつくる3つの方法

――ブランドを育てるには時間がかかります。しかし、いまの経営者は短期で業績を上げることを求められています。こうしたなか、経営者はブランドを育てることに対してどう向かい合えばよいのでしょうか。

デービッド A. アーカー
カリフォルニア大学バークレー校ハース経営大学院名誉教授(マーケティング戦略論)。ブランドのコンサルティング会社プロフェット社副会長。
ブランド論の第一人者として知られ、マーケティング・サイエンスの発展に著しく寄与したことに対して「ポール D.コンバース(Paul D.Converse)」賞を、またマーケティング戦略への業績に対して「ヴィジェイ・マハジャン(Vijay Mahajan)」賞を受賞。主な著書に『ブランド論』『ブランド・エクイティ戦略』『ブランド優位の戦略』『ブランド・リーダーシップ』『ブランド・ポートフォリオ戦略』『シナジー・マーケティング』(以上、ダイヤモンド社)などがある。

デービッド A. アーカー(以下略) ブランドを育てるために、まず企業が最初にやるべきことは、消費者との約束をきちんと果たすことです。すなわち製品やサービスについて、約束した品質のものを提供するということです。それ自体、時間のかかることだと思います。

 次にやるべきことは、消費者とのコミュニケーションをしっかり取ることです。これにもやはり時間がかかります。そのため、ブランドを育てるには時間がかかるという現実を、経営者はある程度、覚悟しておかなければならないでしょう。

 ただし、〈iPhone〉がいい例ですが、品質が素晴らしく消費者やメディアも大いに興味をもってくれている場合は、短期間でも強力なブランドが確立できます。そうしたチャンスがあれば、逃さないようにすることが大事です。

――今回のサミットでのお話で印象的だったのが、スティーブ・ジョブズのような天才でなければ、新しいサブ・カテゴリーをつくれる機会は一生に1回あるかないかだが、常にそれをつくり出そうとするイノベーションが重要だということです。どうすれば新しいサブ・カテゴリーをつくりだせるものなのでしょうか。

 サブ・カテゴリーをつくるためのアイデアは、3つの方法で得ることができます。1つ目は、消費者からアイデアをもらうということです。たとえばP&Gは、〈ボールド〉というポット型容器の洗剤を販売しています。この洗剤は、消費者がどのように洗濯しているかを観察することから生まれた製品です。2つ目がR&Dです。技術部門側から「このような新しい技術を開発したが、何かに応用できないか」と発信することで、新しいサブ・カテゴリーのアイデアが出てくるケースがあります。そして3つ目として、スティーブ・ジョブズのような天才的なリーダーから生まれるアイデアです。

――日本企業は2つ目のR&Dに頼りすぎてきたような気がします。3つ目の天才的なリーダーは置いておくとしても、1つ目のカスタマーからアイデアを得る点をもっと伸ばす必要がありそうです。

 そうですね。ただ、日本企業に関しては、組織のサイロ化の問題が典型的だと思います。つまり、部門間の縦割りの問題、セクショナリズムの問題です。すべてのブランドは複数の組織内サイロにまたがる存在です。ブランドを戦術的に扱うのであれば、細分化した市場を受け持つサイロごとの独自路線は有効のように思えますが、それを優先させると全体的なコントロールを失うことになり、ブランドの弱体化や衰退につながります。

 たとえばソニーにしても、アップルが〈iPad〉を出す前に〈ウォークマン〉や〈VAIO〉などの斬新なヒット商品を出しましたが、どれも社内のミュージック部門との連携はとれていなかったのではないでしょうか。複数のサイロが存在する組織では、孤立したサイロで素晴らしい成功例が生み出されても、組織全体に広がっていかないケースが珍しくないのです。

――最新刊の『ブランド論』(ダイヤモンド社)を読んで、日本の事例を含め世界中の事例を紹介されていることに改めて驚きました。

 私は、成功している会社の秘訣がどこにあるのか、ということに非常に興味を持って調べています。世界中のうまくいっている会社を分析して、それに自分の理論を照らし合わせて考えているのです。

「デービッド・アーカー・ドットコム」というブログがあり、週に1回アップデートしています。そこには、私が最近、興味を抱いていることなどを書いた200くらいの短い記事を掲載していますので、関心をお持ちの方は覗いていただければと思います。

――本日は貴重なお時間をいただき、ありがとうございました。

 

【書籍のご案内】

『ブランド論――無形の差別化を作る20の基本原則』(デービッド・アーカー:著、 阿久津聡:訳)
1994年に発行した『ブランド・エクイティ戦略』によって、マーケティングでのブランドの重要性が決定的なものとして認識された。その立役者は、著者のデービッド・アーカーである。その後、アーカー教授は、数々の書籍を執筆し、ブランド・アイデンティティ、ブランド拡張、ブランド・ポートフォリオなどの言葉を世に送り出してきた。本書は、そのアーカー教授の20年に及ぶ研究成果を初心者にもわかるようにコンパクトに紹介したもの。ブランドにかかわるすべての人が読むべき一冊。

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