グループ・ガバナンスの要
CFOに求められる役割

デロイト トーマツ グループ CFOプログラム

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コモディティを軽視せず
複雑性産業と組み合わせる

 続いて基調講演に立ったのは、東京理科大学大学院教授の伊丹敬之氏である。伊丹氏は日本の六大産業の付加価値シェアを示して、「1985年と2010年を比較すると、着実にシェアを伸ばしているのが化学・化学製品と自動車などの輸送用機器です」と指摘。

東京理科大学大学院
イノベーション研究科教授
同研究科長
伊丹敬之氏

 伊丹氏がこうした構造変化に注目するのは、将来に向けて「日本企業は何で食っていくのか」という危機意識ゆえ。そのためのキーワードを6つ提示した。[1]電力生産性、[2]ピザ型グローバル化、[3]複雑性産業、[4]インフラ産業と産業インフラ、[5]中国、[6]化学技術である。講演では、前半の四つのキーワードを中心に議論が展開された。

 まず、「電力生産性で食っていく」とはどういうことか。東日本大震災と原発事故により、燃料の輸入が急増した。貿易赤字の増大と共に、電気料金の大幅な値上げが不安視されている。

「1973年のオイルショック後、石油の大幅な値上げを受けて、日本の製造業はエネルギー消費を減らしながら長期にわたる成長を達成しました。同じことに、いま一度挑戦するのです。そのためには、電力生産性の向上が欠かせません」と伊丹氏はいう。

 電力生産性は「付加価値額÷使用電力量」で求められる。一キロワットの電力を使って、どれだけの付加価値を創出できるかという指標だ。

「電力生産性を高めるために、企業のレベルでは事業や工程の配置を見直す必要があります。電力生産性の高い事業や工程を日本に置き、海外との最適なネットワークを構築するのです」

 次に、ピザ型グローバル化。ピザの中心部は薄いが、そこにはおいしいトッピングが載っている。「国内オペレーションのかなりの部分をピザの中心に残しつつ、海外に拡大していく。そんなグローバル化を目指すべき」と伊丹氏。日本に残すトッピングの条件はいくつかある。日本の産業蓄積や技術蓄積を生かせるといったものだが、伊丹氏は「複雑性」を重視している。

「複雑な機械や素材、サービスなど。あるいは、産業工程やビジネス・システムの複雑性という視点もあるでしょう。このような複雑性制御の能力を競争力とする戦略が求められています」

 複雑性セグメントはどの産業にもある。「新しい成長産業を探すという発想にとらわれるのではなく、コモディティ・セグメントとの組み合わせを考えるべき」というのが伊丹氏の主張だ。

「複雑性セグメントにおいても、コスト競争力や生産能力は重要。コモディティ・セグメントは、生産技術やコスト基盤を提供できる。成熟産業だからといってコモディティを軽視する企業は、長期的には複雑性の分野でも勝てないのではないかと思います」

 日本には有望な複雑性産業が少なくない。たとえば、シニア向け産業。世界の先頭を走って高齢化の進む日本で生み出された商品やサービスは、中国などの後続する高齢化社会で有利なポジションを占めることができるだろう。

 インフラ産業と産業インフラにも伊丹氏は注目している。

「たとえば、基幹部材の供給地、あるいは試作基地としての日本。他の国の産業のためにインフラ的な役割を果たすことは、日本が生きる道の一つと考えられるでしょう」

 最後に、来場したCFOに向けて伊丹氏はこんなメッセージを送った。

「孫子の言葉に『一に道、二に天、三に地、四に将、五に法』とあります。企業経営に即して言えば、一に理念、二と三に戦略(天と地)、四にリーダー、五に経営システム。CFOが主として担う経営システムが五番目だといって貶めるつもりはありません。ただ、もっと大切なものがあるということを理解したうえで、経営システムをつくってもらいたいと思います」

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