グループ・ガバナンスの要
CFOに求められる役割

デロイト トーマツ グループ CFOプログラム

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海外事業の拡大やM&Aなどにより、ビジネスの構造はますます複雑化している。その全体像をとらえて有効な打ち手を講じるうえで、CFO(Chief Financial Officer)への期待は大きい。そのCFOが一堂に会する場として、トーマツグループの主催する「CFO VISION 2014」が8月26日に都内で開催された。国内約100社のCFOが参加し、日本企業のガバナンスのあり方、CFOに求められる役割などを語り合った。

パラダイムシフトに対応し
グローバル経営に挑戦

有限責任監査法人トーマツ
CEO兼包括代表
天野太道氏

 最初に登壇したのは、トーマツCEO兼包括代表の天野太道氏。「組織の強みを確立するという戦略を担う立場、そして組織を律し率いるというガバナンスの立場。これらの両面から、経営の担い手としてのCFOの役割を考えたい」と挨拶した。

 次に「グローバル競争を勝ち抜く組織とは」をテーマに、武田薬品工業会長兼CEOの長谷川閑史氏が基調講演を行った。長谷川氏がまず指摘したのが、世界のパラダイムシフトである。

「パラダイムシフトのドライビング・フォースはさまざまですが、私が注目したいのは3つ。人口、世界経済における先進国から新興国へのシフト、情報化社会です」

 1950年に25億人だった世界人口は2011年に70億人に達し、今世紀後半には100億人を突破すると見られている。また、いまや世界のGDP成長の牽引役は新興国。医薬品市場においても同様だ。

武田薬品工業
代表取締役会長 CEO
長谷川閑史氏

「たとえば、日本の医薬品市場はかつて世界の約16パーセントを占めていましたが、この比率はほぼ半減しました。今後さらに低下することが予想されます」と長谷川氏。こうしたなかで、武田薬品工業は以前からグローバル化を進めてきた。

 同社は1980年代後半から90年代後半にかけて、国際戦略製品と呼ばれる大型の新薬を次々に市場に投入。2009年以降、順次特許切れの時期を迎えた。それによる業績へのマイナスのインパクトは、長谷川氏が社長に就任した2003年当時から予想されたこと。長谷川氏は当初から、グローバル化に向けた布石を打ってきた。重要な打ち手の一つがM&Aである。

「国際戦略製品一つの売上げは数千億円。次々に特許切れを迎えるなか、これを自前の成長だけで補うことはできません。持続的な成長のため、M&Aを組み合わせる必要がありました」

 そこで、長谷川氏は段階的なアプローチを選択した。

「当初はコスト・シナジーを目的とするM&Aは行いませんでした。できなかったと言うべきでしょうか。コスト・シナジーを実現するためには、ビジネスのモメンタムを失わないかたちで、相当のリストラが必要です。特に海外においては、そのような経験の蓄積がありませんでした」

 まず行ったのは、研究開発力の強化を目的とする小規模のM&A。ノウハウを積み重ねたうえで、2008年に、がん領域に強みを持つアメリカのバイオ医薬品会社ミレニアム・ファーマシューティカルズを買収した。2011年にはスイスの製薬会社ナイコメッドを統合。こちらは、新興国市場でのプレゼンスの獲得が大きな目的だった。

「ナイコメッドでは重複機能などについてかなりのリストラを実施。ようやく、自分たちの力でこうしたことができるようになりました」と長谷川氏。

 いっそうのグローバル化を目指す同社の重要テーマとして長谷川氏が挙げたのは、人材と研究開発の生産性向上。人材については次のように語る。

「グローバル・スタンダードの人材が、キー・ポジションに就く必要があります。ただ、現状では必ずしもそうなっていません。目指す方向に進むため、現在、グローバル・サクセション・プランニングを推進しています」

 各機能の拠点は、東京に限らず海外も含めその機能に最適なロケーションを選定。また、他社や業界外のベスト・プラクティスから積極的に学ぶことを心がけているという。武田薬品工業のグローバル経営確立に向けたチャレンジは、新たなステージを迎えようとしている。

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