企業はメディアとなり、自らコンテンツを発信せよ

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アメリカでコンテンツ・マーケティングが花開いている現状を、ヒル アンド ノウルトンの幹部が報告する。従来型の宣伝・広報を超える優れたコンテンツを、自社で製作・発信する企業が増えている。この潮流は「企業による啓蒙の時代」の始まりを表すものだという。本誌2014年10月号特集、「2020年のマーケティング」関連記事。


 現在、私たちを取り巻くあらゆるブランドや企業が歴史的な転換期を迎えている。変化の主な要因は、コンテンツだ。

 いまや北米のB2C企業の9割が、コンテンツによるマーケティングを採用している(英語報告書)。つまり、従来型の宣伝や売り込みを行う代わりに、顧客にとって有用な情報やアイデア、エンタテインメントを発行・伝達することでブランド力を強化しているのだ。コンテンツ・マーケティングの隆盛は、企業のコミュニケーションのあり方を一変させた。創造的なブランドにとっては、受賞歴もあるタンブラーがきわめて重要な存在となった。SNSでのハッシュタグの活用も、商品のキャッチコピーと同等の訴求力を持つようになった。また、ディジデイ・アワード(デジタルのメディア/マーケティング/広告の情報を発信するサイトDigidayが主催する賞)は、スティービー・アワード(ビジネス界で貢献した企業や人々に贈られる賞)と同じくらい誰もが望む賞となった。いまやコンテンツ・マーケティング革命は、一時的な流行以上の様相を呈している。それは、ビジネスコミュニケーションの歴史に加えられた重要な新章――企業による「啓蒙の時代」――の始まりに他ならない。

 コンテンツ・マーケティングやブランド出版(brand publishing:ブランド独自の媒体でコンテンツを発信すること) の動きが急速に拡大しているのは、消費者の好みに沿っているからだ。コンテント・マーケティング・インスティテュートの報告によると、人々の70%は広告よりも記事を通じて企業のことを知りたいと感じているそうだ(英語記事)。かたやニューヨーク・タイムズ紙は、ネイティブ広告には紙面のニュース記事と同じくらい読者に情報を伝え関心を惹く効果があると認めている(英語記事)。ブランド出版は企業のレスポンスをリアルタイムに反映でき、より高度な透明性を付与できる。しかも従来のマーケティング施策に比べて少ない金額と時間で、より鮮明なブランドイメージを構築できるメリットがある。

 しかし、ブランド出版の最も大きなインパクトは、企業独自のアイデアを企業みずから育み活用できることにある。優れたスポンサーコンテンツはたいてい、その企業にしかない知識を伝えることで生み出されるのだ。

 ブランド出版はうまくやれば、社内のリソースと専門知識を掘り起こして自社を「知の媒介者」とすることにつながる。現在では多くの大企業は、みずからがメディアであり、報道機関、研究を行う大学、そしてソーシャルネットワークであるといってもよい。

 社内のメディア機関を強化する最近の風潮が、そのことをよく表している。いまや多くの有名ブランドがトップジャーナリストを大量に引き抜き、伝統的なメディア機関の最も優れた要素を取り入れようとしている。たとえば、国際的ジャーナリストだったハミシュ・マッケンジーは現在テスラモーターズの筆頭ライターだ。元USAトゥデイ紙のミシェル・ケスラーは、現在はクアルコムが提供する情報サイト「スパーク」の編集長に就任している。アンドリーセン・ホロウィッツは、ワイヤードからマイケル・コープランドを引き抜いた。なぜこうした動きが見られるのか。経験豊富なジャーナリストや記者は、情報を統合し、読者の関心を惹き付け、編集上の重要な指針を維持するには最適の人材だからだ。つまり、優秀な記者と編集者が協働し、効果的な指揮系統が敷かれ、編集長が陣頭指揮を執る――そんな組織を社内に確立できるということだ。

 ただし、昔ながらのニュース編集室を企業内に移植しているだけと見なすのは見当違いだろう。ブランドコンテンツはまだ新しい分野であり、ブランドの編集チームはその組織形態がどうであれ、自社の収益を常に念頭に置きながら、読者の目を引くストーリーを提供しなければならない。企業内の編集組織には、独自の視点を形成できるだけの独立性が求められる半面、企業固有の情報にアクセスできる程度には企業と一体化している必要がある。

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