新世代のデジタルCMO、5つの特性

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本誌2014年10月号(9月10日発売)の特集は、『2020年のマーケティング』。ITの進展と購買行動の激変をふまえた、新たなマーケティングの組織づくりと方法論を示していく。HBR.ORG関連記事の第1回は、デジタル技術とマーケティングの統合に成功している「デジタルCMO」が持つ5つの特性を検証する。

 

 今日の中堅やベテランのマーケターには、自身の新人時代には想像もつかなかった仕事が求められている。過去10年間で、これほど激変した分野はないのではないか。

 なぜなら、静かなる「クーデター」によって「戴冠」が行われ、顧客が「王様」となったからだ。情報と選択肢があふれかえるなか、顧客はソーシャルでつながり合った世界を横断しながら、意思決定の道筋をみずからの力で進んでいけるようになった。その過程では実物とバーチャルの境界線が曖昧になり、マーケターがターゲットに向けて発するメッセージはかき消されてしまう。

 多くのマーケターは間違ったやり方にとらわれ、この動きに乗り遅れている。マーケティング・メッセージの受け手(オーディエンス)を見つけて惹きつけるには、適切なデータを収集する能力がいまや不可欠だ。かといって、データだけで十分というわけでもない。たとえばSEMやソーシャル・マーケティングの分野では、コンテンツを充実させる力が物をいう。そのうえ、マーケターはパブリッシャー(媒体社)の役割も果たさなければならない。

 マーケティング責任者はこうした課題に対処するために、自身の役割を真摯に見つめ直す必要がある。筆者は2013年4月、「デジタルCMOの台頭」という記事でこの件に関するいくつかの見解を述べた(英語記事)。その後、当社ガートナーはこの問題について継続的な調査を実施し、CMOの変容のパターンやその代表例を特定した。デジタルCMO――デジタル・マーケティングの組織をつくり率いるリーダー――のやり方は、古いタイプのCMOとどう違うのか。それを見ることで彼らの実像が浮かび上がった。デジタルCMOは、次の5つの点で秀でている。

1.「顧客を見つける」戦略から「顧客に見つけてもらう」戦略へ転換する

 優秀なデジタルCMOは、丘の上から叫んで一方的に顧客の注目を集めようとはしない。その代わりに、コンテンツ・マーケティングの戦術を統合して、受け手が最適のタイミングでブランドに接触できるようにする。ブランドに関連しつつも受け手を主役に据えたコンテンツを発信することで、意思決定の道筋を自力で進む顧客を刺激して喜ばせ、そして巻き込む(これが最も重要だ)。その際、広告(ペイドメディア)よりも、評判獲得メディア(アーンドメディア)と自社メディア(オウンドメディア)のほうがしばしば有効となる。

 マーケティング会社ハブスポットのCMOマイク・ボルペは、このやり方を実践する代表的人物だ。彼とそのチームは連日、デジタル・マーケティングに関する理解を助けるブログ記事や電子書籍、インフォグラフィック、動画など多種多様なコンテンツを発信している。そのため同社は、デジタル・マーケティングの啓蒙者として注目される存在となった。アメリカン・エキスプレスも「オープン・フォーラム」というサイトを開設し、中小企業のマネジャーや経営者向けに読み物のようなコンテンツを発信している。この2社は、一方的な宣伝をするのではなく、媒体社のような活動をするブランドの好例だ。

 しかしボルペは、「1つの活動だけでうまくいくことはめったにない。さまざまな施策がかみ合った時に効果が出る」と語る。インバウンド・マーケティングとは、地道な実験なのだ。適切な効果測定を行わないと、多種多様な施策はかえって収拾がつかずに破綻をきたすおそれがある。

 今日の顧客は、注意を引こうとする情報の洪水にさらされている。顧客にとって確実に有用な情報を提供することは、マーケターの責務である。それこそが「顧客に見つけてもらう」方法なのだ。

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