タクシー業界の破壊者Uberの
2つの強みと1つの弱点

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タクシー業界の破壊者として注目されるUber(ウーバー)。破壊的イノベーションの専門家アンソニーは、同社の存在をどう見るか。クリステンセンの理論に非常に忠実な企業として称賛に値する一方で、弱点もあるという。それは「既存プレーヤーと同じ土俵で戦っている」ということだ。


 1人の消費者として、私はUber(ウーバー)のサービスを熱烈に支持している。先日、シンガポールにいた私は交通のやや不便な場所で食事をする機会があった。会食が終わったあと、ホテルのスタッフはタクシーを呼ぶために3台の電話で奮闘してくれたが、なかなか車は揃わない。待っている15人の客は苛立ちをつのらせる。そこで私がスマホを3回クリックすると、12分で車がやってきた。ウーバーは簡単で、機能的な素晴らしいサービスだ。

 私はまた、破壊的イノベーション理論を学び教える人間としても、ウーバーを気に入っている。なぜなら、この交通サービス会社が新たな都市へのサービス拡大を狙う際に遭遇する課題は、ある事業コンセプトが破壊的イノベーションになるかどうかを検討するうえで、恰好のケーススタディとなるからだ。

 なぜこのことが重要なのか。それは、破壊的イノベーションのパターンにできるだけ忠実に従う企業こそ、爆発的な成長を実現し市場を一変させる最も大きな可能性を秘めているからである。別の方法で成功する企業もあるだろうが、その場合はより熾烈な競争に直面し、より多額の出費を強いられる可能性が高い。

 クレイトン・クリステンセンの基礎的理論を適用した我々イノサイトのフィールドワークに照らせば、破壊的イノベーターとなりうる企業には、3つの条件がある。

 第1に、顧客にとって昔から重要な何かを、より簡単で入手しやすいものにする必要がある。複雑なことを簡単にしたり、高価だったものを手頃な価格で提供することにより、何かしら制約のある市場を劇的に拡大させたり、現在の市場リーダーよりもはるかに安い価格帯で成功する可能性がある。

 ウーバーにはまさにこの条件が当てはまる。どこの都市でも、タクシーをつかまえるのは実に面倒な作業である。ウーバーは洗練されたユーザーインターフェースによって、この問題を簡単かつ鮮やかに解決してくれる。料金の急騰(天候が急変した時や大晦日など、需要が多い時に跳ね上がる)に対する顧客の苦情も時にはある。だが、この5年間に立ち上げられたベンチャー企業の中で、おそらく同社の顧客基盤が一番強固だろう。

 第2に、表面からは見えない優位性を築く必要がある。つまり製品やサービスを、顧客からは魔法のように見え、他社にとっては模倣困難な方法で提供することだ。理想としては、製品やサービスを簡単かつ安価にする独占的な技術、あるいは、事業規模の拡大とともに競合企業よりもコストを劇的に下げる革新的なビジネスモデルが求められる。いずれの優位性(両方あればなおよい)も、既存の競合企業や新規参入者が必ずしかけてくる模倣から自社を守ることになる。

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