エベレストの登山ガイドが示す、
命を背負うリーダーシップ

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エベレスト登山隊を6度登頂に導いたガイドが、チーム・マネジメントの秘訣を語る。それは今日の厳しいビジネス環境に生きるリーダーにも、大いに参考となるものだ。


 私は近々エベレストに登る予定だ。経営学の教授として、私(筆者の1人、デルー)は必然的に、チーム・ダイナミクスが山においてどう働くのかを知りたくなった。私の命はそれに左右されるかもしれないのだ。なお不安に思われる読者のために申し上げれば、私は長年にわたって訓練と豊富な登山経験を積んでおり、今回同行してくれるアルパイン・アセンツ・インターナショナルは世界最高レベルの山岳ツアー会社として知られている。

 それでも、世界最高峰に挑んでいる最中にチームワークがきわめて重要となることは、言うまでもない。そこで私は、登山隊を6度エベレスト登頂に導いた世界トップクラスの登山家(および本記事の共著者)、デイビッド・モートンに話を聞いた。エベレスト登頂に向けてチームをつくり導くには、何が求められるのか。そのリーダーシップの教訓は、今日のビジネスリーダーが直面するリスクと不確実性の高い環境にどう応用できるのか。これらについて、経歴の異なる我々が互いに一致したのは以下の見解だった。

●チームメンバーの目標と重点を知る
 エベレスト登山が大きな賭けになるのは、エベレスト自体の危険性だけでなく、この挑戦に費やしてきた長年の訓練(および場合によっては、蓄えてきたお金)を誰も無駄にしたくないからである。企業の有望人材が経営トップの座を必死に目指すのと同じように、多くの登山家が「エベレスト」という名の完全な虜になり、その登頂という行為に過剰な幻想を抱いている。その一方で、エベレスト登山の難しさ――いかに危険で偉大な行為であるか――を軽く考え、大したことではないかのように振る舞う人もいる。

 リーダーは、各チームメンバーがこれらを両極端とする軸のどの辺りにいるかを観察し評価する必要がある。そのためには、チームの透明性を促進し、まずはリーダーが率先して胸襟を開くことだ。自分が考えるチームの目標と、自分自身の動機を伝えよう。そしてチームの目標を達成することが、個人の目標達成にもつながることを理解させる。達成が不可能と思われる個人目標があれば、正直に告げなくてはならない(リーダー自身の目標がそうである場合も)。

●心理的安全を醸成する
 リスクの高い環境において、成功の最大の敵は恐れの感情だ。予期しない出来事や挫折は必ず起こる。その時に恐れがあると、チームが再起するために必要な情報が隠されてしまう。リーダーは、チームメンバーが正直に自分の意見を――たとえ他のメンバーに好まれない意見であっても――発言できるようにしなければならない。エベレストでは、自分を守ろうとして情報を出さないということが容易に起こりうる。たとえば、弱い人間だと思われるのを恐れて健康上の問題を口にしない、あるいはスキルを欠いていると思われたくないために、登山技術について質問しない、という人もいる。リーダーの計画に不安を表明すれば、反抗的、不適切、または「チームプレーヤーではない」との烙印を押されることを恐れているかもしれない。メンバーたちが率直に声を上げ、懸念を打ち明け、前提への疑問を表明できるようにするために、リーダーは何をすべきだろうか。次の方法を念頭に置こう。

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