グーグル、ゴールドマン・サックス・・・
なぜ企業はマインドフルネスに取り組むのか

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 集中力、明瞭な思考、創造性、思いやり、勇気。これらこそ、私がともに仕事をし、教え、メンタリングを施し、インタビューした「マインドフルなリーダー」たちが持つ資質である。これらはまた今日の卓越したリーダーたちに、多くの困難に立ち向かう再起力と、長期的な成功を目指す決意を与える。本当に違いをもたらすのは――これは単純なようで多くの企業幹部が気づいていないことだが――思考を明瞭にする能力、そして最も重要なチャンスに集中する能力なのだ。

 心理学者のダニエル・ゴールマン博士はEQ(心の知能指数)の提唱者である。彼は新著Focusで、脳の認知力を制御することが思いやりや勇気といった心の資質を高めること、そのためにマインドフルネスが重要であることを、データで示している。また、リーダーが自身や組織の関心を明確に方向づけるためのフレームワークを示している。すなわち、①自分への集中、②他者への集中、③外界への集中、という3種類の集中力をこの順番で使いこなすという方法だ(詳細は本誌2014年5月号「リーダーは集中力を操る」を参照)。こうした集中力を養うには、1日のなかで生じる不安や混乱、プレッシャーを取り除き完全に脳をリラックスさせるための、習慣的な取り組みが必要となる。

 私は1975年、妻のペニーとともにトランセンデンタル・メディテーションのワークショップに参加した。以降、瞑想の習慣を38年間続けている。いまでもノートパソコンを飛行機に忘れてくるなどのうっかりミスがあるものの、目の前の瞬間に集中する努力はずっと続けている。私の家族も全員が瞑想を日々行っている。息子のジェフはみずからの努力で経営幹部となったが、毎日の瞑想とジョギングがなければ、ストレスに満ちたこの仕事で成功できなかっただろうと言う。

 マインドフルなリーダーになる方法は瞑想だけではない。ハーバード・ビジネススクールで私が教えるクラスに参加する企業幹部たちは、意識を落ち着かせ思考を明瞭にするためのさまざまな方法を教えてくれる。彼らによれば、リーダーシップを最も阻害するのは知能指数の欠如や職務の厳しさではなく、集中力と健康を維持することの難しさであるという。そして幹部としての厳しい生活に備え、頭と体、精神を定期的に回復させるための日課に取り組んでいる。たとえば祈祷、日誌の執筆、ジョギングやエクササイズ、長距離のウォーキング、配偶者やメンターとの深い対話などだ。

 重要なのは、内省を習慣的に行うことだ。毎日の決まった流れから自分を引き離して、仕事と人生についてじっくり考え、自分にとって本当に大事なことを見極める――その機会を持つ必要があるのだ。それは成功にも、幸福と長期的な充実感にもつながるだろう。


HBR.ORG原文:Developing Mindful Leaders for the C-Suite March 10, 2014

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ウィリアム・W・ジョージ(William W. George)
ハーバード・ビジネススクール教授。経営管理論を担当。メドトロニックの元会長兼CEO。著書に『リーダーへの旅路』(ピーター・シムズとの共著)がある。

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