デジタルの時代こそ
マーケティングの基本を学べ
――経営コンサルタント&作家・神田昌典

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SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)などの台頭によって、マーケティングを取り巻く環境は大きく変わった。データを分析しさえすれば成果は上がるとも思われるが、デジタル時代のいまだからこそ、フィリップ・コトラー教授が説くマーケティングの基礎を学ぶべきだと神田昌典氏は語る。神田氏のインタビュー後編。

コトラー教授のメッセージに勇気をもらった

――コトラー教授の最近の考え方で心に響いたものはありますか。

神田昌典(以下、神田) どれも気づきがあります。企業とNGOとの提携や企業の社会的責任、ベンチャー企業に関することも書かれていますよね。それだけでも、常に戦略を描き直さなければいけないといことがわかります。

――近年、マーケティングと企業の社会貢献をつなげようと活動されています。

神田 その影響は企業にとっても大きいでしょうね。企業が新しい環境に適合していくための指針と自信を与えてくれたと思います。伝統的なダイレクト・マーケティングに基づいて、顧客に対するベネフィットをボンと打ち出すと消費者は動きます。企業もそれをわかっているからこそ、社会性に舵取りすることはとても大変なことです。なぜなら、短期的には利益が大きく減る行為だといえるからです。

フィリップ・コトラー
ノースウェスタン大学 ケロッグ経営大学院 教授
シカゴ大学で経済学修士号、マサチューセッツ工科大学(MIT)で経済学博士号を取得した後、ハーバード大学で数学、シカゴ大学で行動科学を研究。『ハーバード・ビジネス・レビュー』、『スローン・マネジメント・レビュー』をはじめとする学術誌に100を超える論文を寄稿。『ジャーナル・オブ・マーケティング』誌の年間最優秀論文の筆者として、唯一、アルファ・カッパ・サイ賞を3度受賞している。 主な著書に『コトラー&ケラーのマーケティング・マネジメント 第12版』(丸善出版)など多数。

 私自身、そちらに切り替える勇気が必要だったときに、コトラー教授が3.0のメッセージを出してくれたことはとても大きいですね。加えて、いまは社会性あるメッセージを出そうとも、ベネフィット中心のメッセージを出そうと、少なくともマスメディアの広告を出しても反応がないので、切り替えやすいともいえます(笑)。

――マス広告はほとんど効果がない。

神田 残念ながら、それは事実ですね。効果が見えないので、私も新聞広告を今年はやめました。メッセージを工夫したり、粗利率のある商品を導入したりと、ある程度のライフ・タイム・バリューで考えると十分メリットがありましたが、いまはもうそれがない。オンライン広告は多少は違った効果を生むと思いますが、それでもマス広告が厳しいことに変わりない。紙面はもっと厳しいですね。

 もはや、ネットだけでも駄目なんです。リアルで知っている人とのコミュニケーションが加味されないと、購買決定にはなかなかつながらない。私は「コミュニティ・メディア」と言っていますが、リアルな人とのコミュニケーションという視野が、企業活動においての重要なポイントになってきたと思います。

 たとえば、ユーチューバーはその例ですね。コトラー教授も新しいメディアの台頭に触れていますが、最も人気のあるユーチューバーには定期購読者が2300万人いて、年収が約7億円。ユーチューバーを集めたエージェントのメーカー・スタジオが、ディズニーに約1000億円で買われたというニュースもありました(注)。彼らは一つの放送局をつくっているようなものなので、ディズニーは放送局を100も200も買ったことになる。たった数年間でディズニーに買収される、これはメディアの地殻変動だといえます。

 ここまでになると、ネットの世界で完結していたユーチューバー自身にもリアルな活動が求められるのがおもしろい。いまは一人芝居で視聴数が取れているとしても、それも飽きられてくる。より企画力のある人が、毎日のようにおもしろい映像を撮り続けないと成立しません。つまり、ネットでのプレゼンスを高めるためにも、リアルのアクションが伴わないと影響力を失っていくことになるのです。

(注)メーカー・スタジオの買収額は5億ドル。買収後の実績に応じて、株主に最大4億5000万ドルを支払うとディズニーは約束した。
 
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