コトラーのマーケティング教科書で
日本企業が読み落とした個所はどこか

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日本でも人気のマーケティングの父と言われる、フィリップ・コトラー教授。その膨大な書籍の中で、日本企業がもっとも読むべき個所はどこだろうか。9月に東京で開催されるワールド・マーケティング・サミットが開催されるのを記念し、コトラーが在籍するノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院の卒業生が、コトラーの業績を語る。

 

STPこそコトラー理論

 フィリップ・コトラー本人によるマーケティング理論とは何か、という問いに対して、4Pもマーケティング・ミックスも本人の理論ではないと前回述べた。では本人の理論は何なのか。その答えは、おそらく「STP」と言ってよいであろう。STPとはセグメンテーション、ターゲティング、ポジショニングの頭文字である。

 今でこそ、セグメンテーションの考えは当然となっているが、マーケティングの歴史の中では、マス・マーケティングの時代が長く続いた。古くはT型フォード(1908年発売)や、コカコーラ独自の形状であるコンツアー・ボトル(1915年発売)のように、一つの製品をすべての顧客に販売するスタイルである。大量生産によってコストを大きく引き下げ、大量広告によって消費者に訴求し、大量販売によって投資を一気に回収するというビジネスが、マーケティングの当初の姿であった。

 競合企業が少なく、消費者の選択肢が限られている時代であれば、マス・マーケティングは非常に効率よく利益をもたらすことができる。特に、初回購買の消費者のように、購買経験や製品知識が少ない場合は、最も売れている製品を買うという行動が多くなるため、他社に先駆けてマス・マーケティングで規模を拡大することには、意義がある。日本でも、松下電器産業(現パナソニック)が全国にナショナル・ショップという家電店を展開した高度成長期は、マス・マーケティングのサイクルである大量生産、大量広告、大量販売が功を奏した。

 しかし、高度成長が一段落すると、消費者は自らの過去の購買経験に基づいて、様々な嗜好・選好を持つようになる。競合も登場してくるので、消費者の選択肢は広がる。そうした状況の中で、「最大公約数的な」マス商品のみで勝負していると、「特徴を絞った」競合に負けてしまう。そこで、必要に迫られて登場してきたのが市場細分化(マーケット・セグメンテーション)という考え方である。

 市場セグメントの中には、より魅力的なセグメントもあるが、それは顧客そのものの特性(高いプレミアム価格を払う傾向にある)と、競合条件(過当競争に陥らないように何らかの参入障壁がある)、自社の能力(そのセグメントのニーズを満たす商品を提供できる)によって決まる。どの程度の(広さまたは数の)セグメントをカバーするかは、自社の経営資源によって決まる。こうした検討を経て、ターゲットとすべきセグメントを設定し、その中で、自社商品・ブランドの特徴をどう位置付けるかというポジショニングを行うのが、STPの流れである。

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