マーケティング4Pとは
コトラーが最初に提唱したものではない

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マーケティング4Pと言えば、あのフィリップ・コトラー教授が提唱したものだと思われているが、実は違う。にもかかわらず「コトラーがマーケティングの父」と言われるのはなぜか。9月に東京で開催されるワールド・マーケティング・サミットが開催されるのを記念し、コトラーが在籍するノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院の卒業生が、コトラーの業績を語る。

 

コトラー本人による理論とは?

 フィリップ・コトラーと言えば、言わずと知れたマーケティングの大家である。日本でも、分厚い著作(代表的には『マーケティング・マネジメント』)が翻訳されている。ちなみに、なぜあのように分厚い本になってしまうのかというと、多くのビジネススクールの、多くのマーケティング科目(コア科目のみならず選択科目にも)に、1冊で対応するためである。このため出版部数が大きくなり、マーケティングのバイブル的な地位を堅固なものにした。

岸本 義之
(きしもと・よしゆき)

経営コンサルタント。早稲田大学 大学院商学研究科 客員教授。 1986年 東京大学経済学部卒、'91年からKellogg(ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院)に留学してMBAを取得し、慶應義塾大学大学院経営管理研究科にてPhD取得。マッキンゼー・アンド・カンパニー、ブーズ・アンド・カンパニーなどで20年以上にわたって、戦略や組織に関わるコンサルティング・プロジェクトを多数行っている。著書に『メディア・マーケティング 進化論』(PHP研究所)、『金融マーケティング戦略』(ダイヤモンド社)など。

 しかし、著作が分厚くなったことの副作用として、中身をちゃんと読んだことのある人が少ないという問題も起きている。その意味でもバイブル的である。このため、「コトラーのマーケティング理論とは何か?」と問われて、即答できる人はそう多くない。コトラーの代表的な著作は、様々な学者によるマーケティング理論を網羅したものであり、それらの理論の多くにはコトラー自身も影響を与えている。つまり、コトラー自身の理論、コトラーに影響を受けた理論、コトラーが影響を受けた理論、コトラーとは関係ないがマーケティングを語る上で重要な理論、などが体系的に編集されているのが、コトラーによるマーケティング教科書である。

 なので、コトラー自身の理論とは何か、という問いへの答えは難しいのである。たとえば、マーケティングを学んだ人の多くは「マーケティングの4P」がコトラーの理論だと思っている。しかし、これはジェローム・マッカーシーが1960年に著書Basic Marketing: A Managerial Approach(邦訳は『ベーシック・マーケティング』、1978年)で最初に提唱したものであり、コトラーの創作したものではない。

 では、なぜ4Pはコトラー理論だと思われているのだろうか。実は、4Pは、マーケティングを教える上で非常に便利なのである。企業がマーケティング活動を行う上で最も重要な要素が、たった4つに分類され、その4つが(そこそこ)網羅的にできているので、マーケティングを最初に学ぶ人の頭に入りやすい。マーケティングの教科書として、まさに便利な概念である。「マーケティングの教科書と言えば4P」、「マーケティングの教科書と言えばコトラー」がくっついて、「4Pと言えばコトラー」になってしまったようである。

 コトラー自身は、のちに4Pを拡張させている。たとえば、4Pは一般消費財のマーケティングには適しているが、無形性の高いサービスのマーケティングに用いるには、やや物足りない、そこでコトラーは、製品(product)、価格(price)、流通(place)、プロモーション(promotion)の4Pに、物的証拠(physical evidence)、プロセス(process)、人(people)を加えて、7Pとしている。

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