川越胃腸病院が
スタッフのリテンションに成功したのはなぜか

組織の活性化に必要な「見極める力」【最終回】

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モチベーション、目標設定に続き、最終回では「理念浸透」をテーマに考える。経営理念の浸透や強い組織文化の構築は組織にどのような効果をもたらすのか。強い文化が組織にもたらす好循環を、川越胃腸病院の事例をもとに考える。

なぜ組織はバラバラになるのか 

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竹内規彦(たけうち・のりひこ) 早稲田大学ビジネススクール准教授。2003年名古屋大学大学院国際開発研究科博士課程修了。博士(学術)学位取得。東京理科大学経営学部准教授、青山学院大学大学院経営学研究科(戦略経営・知的財産権プログラム)准教授等を経て、2012年より現職。

前回はモチベーションの向上に向けた個人の目標設定や目標管理の考え方について、心理学の諸説をもとに解説した。今回は、個人から少し範囲を広げ、組織・集団レベルでの問題について考えてみる。

 近年、「組織がバラバラ」「経営理念が浸透しない」など個人と組織との統合化の部分で課題を抱えている方々によく遭遇する。この課題に対するヒントを後に説明する「組織文化の強さ」の観点から、具体的なケースと関連する理論をもとにみていくことにする。

 最初からネガティブな見方で恐縮だが、組織がバラバラな状態とはどのような状態だろうか。1つの組織の中でメンバーのモチベーションに温度差がある状態、組織のメンバーが本人の都合や興味を優先して動いている状態、リーダーによる統率がとれていない状態などさまざまである。

 では、なぜこのような状態が生まれるのだろうか。この問いを読み解く1つのカギが、経営理念の浸透の問題、ひいては組織の文化の「強さ」の問題にあると考えられる。図1は、組織文化の構造を示したものである。

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図1 組織文化の構造

 この図1から、組織文化には、組織を構成するメンバー全員に全社的に共有されているコアとなる価値観(上位文化)と各事業部や部門など下位のユニットを構成するメンバーによって共有されている価値観(下位文化)の2つが存在していることがわかる。例えば、全社的には社員に積極性やリスク・テイキングを奨励する文化(上位文化)がある一方、他方でその会社の品質管理部門には、細部にこだわる慎重な文化(下位文化)が存在しているケースなどもあるだろう。あるいは多国籍企業の場合、日本の本社と海外の子会社とでは、形成している文化、共有している価値観が異なるというケースはよく目にするところである。

 この場合、全社的かつ網羅的な経営理念が上位には存在していて、それが従業員一人一人になんらかの行動基準として影響を与えていると同時に、部門や事業における業務の特性や事業所が存在する地理的な特徴など、それぞれのユニットで異なる文化が共有されていることを示している。

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