部下のタイプを見誤れば
目標設定はマイナスに作用する

組織の活性化に必要な「見極める力」【第2回】

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仕事をする上で、上司が部下の目標設定をする場面は多くある。しかし、部下のタイプによって目標設定のやり方を変えなければ、ともすると目標設定をしたことがマイナスに働くこともある。部下を育てるための「目標設定」には何が欠かせないのか考える。

なぜ明確で困難な目標が必要か

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竹内規彦(たけうち・のりひこ) 早稲田大学ビジネススクール准教授。 愛知県名古屋市生まれ。2003年名古屋大学大学院国際開発研究科博士課程修了。博士(学術)学位取得。東京理科大学経営学部准教授、青山学院大学大学院経営学研究科(戦略経営・知的財産権プログラム)准教授等を経て、2012年より現職。 組織行動学・人材マネジメント論を専門とし、国内外の主要学会にてベストペーパーアワード等を多数受賞。米国Association of Japanese Business Studies前会長。

前回は、星野リゾート社長、星野佳路氏が赤字旅館を再生させた際のケースをもとに、従業員の効果的なモチベーション・マネジメントについて解説した。具体的には、「方向性と納得感の共有」と「従業員参加」の2つの特徴が、多額の負債を抱えた組織の中で自信を失っていた社員のモチベーション向上に大きく役立っていた可能性を浮き彫りにした。

 同時に、この考え方は、モチベーションの重要な理論の一つである「目標設定理論」(goal-setting theory)に沿った考え方であることも説明した。すなわち、(1)目標が具体的で明確であること(目標の明瞭性)と(2)目標が一定以上の困難度を伴うこと(目標の困難度)の2つの条件が整った時に、人はその目標達成にむけて強く動機づけられるというものである。

 目標設定理論の第一人者であるエドウィン・ロック(Edwin Locke)教授によれば、この2つの条件(明瞭性・困難度)は、人の心理に以下のような直接的な影響を与えると説明している。

1.注意の集中:人の注意力および行動の方向性を決める。

2.努力の量:目標の困難度に対応させて、努力水準を決定づける。

3.努力の持続性:一定水準以上の努力を維持させる。

4.方略の考案:効果的に目標を達成するための手順(方略)を決定づける。

 すなわち、(曖昧ではなく)具体的でかつ困難な目標があると、(1)注意力が高まり、(2) どの程度の努力をすればよいかという算段がつけられる。加えて、(3)達成までの持続した行動を引きだし、さらに(4)どうしたら効果的にその目標を達成できるかについての方略を考えやすくなる(創意工夫をする)。この心理を応用することにより、「~したい」という欲求レベルの問題から、具体的に「~する」という行動(behavior)レベルの問題に変換させることが容易になるのである。

 したがって、モチベーション・マネジメントのポイントは、「できない」という心理を取り除き、「できる」という状態・環境を提供することにあるといえるだろう。前回取り上げた星野氏のケースは、まさに従業員が「~できる」という環境を提供し、彼・彼女らが自ら「行動」する下地づくりを実践していた点が参考になる事例であった。

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