リーダーが情熱を持ち続けるために

世界のリーダーに求められるセルフ・マネジメント(第3回)

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遊び心を持つ、マインドフルネスで自己を見つめ直すなど、リーダーの自己管理に必要な新たな動きを紹介してきたが、こうした試みは究極のところ、リーダー自身がビジョンに向かう情熱、その実現に邁進するエネルギーを持ち続けるためにあるのではないか。IMDのOWPの基調講演に登場したソーラー・インパルスの2人の創設者は、夢を貫く情熱とは何かを身をもって示して見せた。本誌9月号特集「一流に学ぶハードワーク」特集の関連連載、最終回。(第1回第2回はこちら)

 

情熱こそが成功の根源

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ベルトラン・ピカール氏。スイスの研究者兼冒険家の一家に生まれる。自身も精神科医であり、1996年気球による初の無着陸世界一周飛行を果たしたのち、太陽エネルギー飛行機の開発に入る。

ソーラー・インパルスをご存じだろうか。スイス連邦工科大学ローザンヌ校で2003年に始まった、化石燃料を使わず太陽エネルギーだけで飛ぶ有人ソーラー飛行機プロジェクトだ。創設者のベルトラン・ピカール 博士は、祖父オーギュストは物理学者で気球飛行家(気球で初めて成層圏に到達)、父ジャックは経済学者で海洋学者(潜水史上初めてマリワナ海溝チャレンジャー海淵に到達)という研究者兼冒険家の一家に生まれ、自身も初めて気球で無着陸世界一周を成し遂げた精神科医である。その冒険で燃料切れの脅威にさらされ、また、医師として持続可能な世界の実現と、それに伴うクオリティ・オブ・ライフの向上を使命と感じて、ソーラー・インパルス号の開発に乗り出した。

「空を飛ぶことは長年、人類の夢だった。そしてそれは実現された。いま我々は、人口増大、資源減少という難題に直面している。しかし、いまある再生可能エネルギー技術でも、世界のエネルギー消費を半分にできるはずだ。最も効率がよくクリーンなソーラー飛行機で世界一周を実現することは、人類初の有人動力飛行、ボーイング旅客機に次ぐ、半世紀ぶりのイノベーションだ。それが新たなチャレンジだと確信した」(ピカール氏)

 プロジェクトのリーダーシップは、二人三脚体制を組んでいる。ピカール氏は主に再生可能エネルギーの開発とチーム・マネジメントを担当し、共同創設者でCEOのアンドレ・ボルシュベルク氏は、飛行技師としてプロジェクトの技術面を担当。課題は山積していたが、2010年にようやく夜間を含む26時間の連続飛行に成功、2013年には初の米大陸横断に成功し、世界で脚光を浴びた。主なスポンサーはドイツ銀行、オメガ、ソルベイ、シンドラーだが、最先端技術を求める彼らのプロジェクトに世界中の企業がこぞって技術を提供、トヨタ自動車もサプライヤーとして名を連ねている。2015年3月には、ノンストップの世界一周に挑戦する予定だ。

「人生の目的は、無菌状態でがっちり守られて生きることか、新しいことを試みて成長することか。私は後者を選んだ」とピカール氏。とはいえ、世界初の挑戦には失敗はつきものだ。「気球で世界一周に挑戦したときも、はじめは失敗に次ぐ失敗だった。失敗すると、他の人が安心する。ほら、新しいことなんて無理でしょ、と。しかし、そこでやめてしまえば、本当の失敗だ」。

 成功するまで挑戦し続ける、それが成功する唯一の方法だという。一方で、それは同じ方法を取ることを意味しない。「頑固で愚かな蜂は、同じガラスに何度もぶつかり、死んでしまう。人間もまた、一つの考えにとらわれやすい。だから同じ戦略に固執せず、常に考え方を変えなければならない。変え続けたからこそ、成功にたどり着けた」「創造的になりたいなら、自分の中の一番深い信念を見極め、その逆をやればいい。そうすれば自由になれる」(ピカール氏)

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