GMは根深い企業体質を変えられるか

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相次ぐリコールに見舞われるGMは、過失を隠ぺいしたわけでも安全を故意に軽視したわけでもなかった。問題の根幹は、「いつも通りのやり方」の結果――つまり組織文化にあるという。いま、強いリーダーシップによる企業体質の変革が迫られている。


 ゼネラルモーターズ(GM)のCEOメアリー・バーラは2014年4月初め、エンジン点火装置の不具合による6百万台以上のリコールが報じられた後、安全性について従業員が意見交換することを奨励する「スピーク・アップ・フォー・セーフティー・プログラム」を発表(英語サイト)。従業員との集会で次のように語った。「GMは、安全性と品質を第一に考える企業文化を大事にしなければなりません。安全性への懸念がある場合、迅速かつ積極的に問題提起すべきです。そういう行動は評価に値します」(4月以降、さまざまな理由でリコール対象車の台数は増え続けている。)

 人間が高速で移動するための乗り物を販売する産業で、従業員が安全について話し合うことが奨励されないのは、奇妙なことに思えるだろう。だが、GMでは「黙っているのは悪いこと」という文化がなかなか育まれずにいる。この点について、ハーバード・ビジネススクールのデイビッド・A・ガービン教授は、「企業文化は組織に深く根を下ろしているため、変えるのは容易ではない」と説明する。なかでもGMなどの大企業が直面する問題はきわめて複雑だ。

 弁護士で元連邦検査官のアントン・バルカスによる3カ月にわたる社内調査の結果発表を受け、バーラは従業員に次のように語った。「社内に官僚気質が蔓延し、複数の部署で担当者が安全性の問題に対処しなかったため、適切な対策が取られませんでした。繰り返しになりますが、重要な情報を明らかにしなかった人々がいたのです。彼らが適切に対応していれば、点火装置の不具合のせいで被害を受けた方々の人生を違ったものにできたかもしれません」

 つまり、GMは問題を隠ぺいしたわけでも、安全性を故意に軽視したわけでもない。いつも通りのやり方をしたのであり、その結果「切迫感が示されることはなく」「問題を会社のトップに上申する人物が誰もいなかった」のだ。バーラは「数人の担当者の責任だ」と説明しているが、そのメッセージの根底には、企業文化――あるいは自動車業界ならではの風土――の問題が示唆されている。

 アメリカの自動車メーカーの多くは、問題への対応が遅い、幹部に悪いニュースを伝えない、コスト削減を最優先する、といった根本的な問題を抱えている。車の製造が複雑であることも問題の一因となっている。アメリカ自動車研究センターの元センター長デイビッド・コール(GMの元社長エド・コールの息子)は、「点火装置の不具合が起きた背景には、この風土が深く関わっている。問題の根本原因を突き止められないのはそのせいだ」と強調する。

 だからこそ、GMは組織としての行動や文化をないがしろにしてはならない。ハーバード・ビジネススクール教授のエイミー・C・エドモンドソンは、問題が起こること自体は避けられないと指摘する。「人々が失敗するからではなく、やっていることが途方もなく複雑だからです。おびただしい数の人々が膨大な数の部品を扱い、テクノロジーも日々変化するため、失敗は常に起こるのです」と、エドモンドソンはワシントンポスト紙の取材で語った(皆さんの手元にあるスマートフォンも複雑な機器で、やはり不具合が生じる。ただ、その不具合で命を落とすことがないだけだ)。

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