たった1つの質問で身につく
交渉に有利なマインドセット

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交渉の能力は、「モチベーションの焦点」によって大きく左右されることが実験によって示された。交渉中に損失回避を考えず、目標をひたすら追求する「促進焦点」を持てば成果が上がるのだ。この焦点は、たった1分のトレーニングによって高めることができるという。


 人生は大小の交渉ごとに満ちている。昇給の話し合い、クライアントや製品・サービス提供者との価格交渉。人員の補強、最もやりがいのあるプロジェクト、フレックスタイムの要求。家に帰ったら子どもと、何歳からスマホを持ってもいいかを話し合わなくてはならない。

 成功には上手な交渉のしかたが不可欠だ。しかし、このスキルを自然に身につけられる人はそう多くはない。交渉とは、相矛盾するモチベーションが交錯する経験だからだ。誰かと価格交渉をする時は、自分が目標とする金額を支払いたい(または受け取りたい)という欲望と、あまりに強く出すぎて交渉が決裂するのではないかという恐れの狭間で折り合いを付ける必要がある。何の成果も得られなかったり、恥をかいたり、職を失う恐れさえある。交渉はすべてがギャンブルであり、必ずリスクを伴うものなのだ。

目標から目を離さないためには

 交渉のうまい人が備えている特性の1つは、どんなリスクに直面しても、目標に対して集中し続ける能力である。コロンビア大学のアダム・ガリンスキーらが行った研究によれば、「促進焦点」を持つ人々が得意としている。

 促進焦点を持つ人は自分の目標を、何かを得るチャンス、進歩や達成、向上の絶好の機会と見なす。人は潜在的な利得を重視して目標を捉える時、自然に(しばしば無意識のうちに)リスクを受け入れやすくなり、うまくいかない可能性をあまり気にしなくなる。一方、予防焦点を持つ人が自分の目標について考える際は、うまくいかなかったら何を失うかを重視する。安全性と、物事がスムーズに進むことが大切だと考えるのだ。したがって、人は予防に焦点を当てている時には保守的になり、リスクを嫌うようになる。

 トーリー・ヒギンズと私が共著Focusや最近のHBR論文に書いた通り、同じ目標でも異なる2つの捉え方があり、それが私たちのあらゆる側面――強みや弱み、用いる戦略、モチベーションなど――に影響を与えている。たとえば、支払う金額を最小限に抑えるとか、最大限の昇給を勝ち取るといった目標がある場合、何に焦点を当てるかによって交渉のやり方が大きく変わってくるのだ。

 ガリンスキーによる実験の1つでは、MBAを学ぶ学生たちに採用担当者を演じてもらい、望ましい志望者(これも別の学生が演じる)を獲得しつつ契約金は最低限に抑えよ、という目標を設定した。交渉を始める前に、採用担当者らがどちらのモチベーションの焦点をより強く持つかを知るためにテストを受けてもらった(診断したい方はこちらの英文サイトへ)。その結果、促進焦点が強い採用担当者ほど、最終合意した金額が少なかったのである。促進焦点と金額の相関係数は実に-0.40だった。

 なぜこのような結果になったのか。この研究では、促進焦点が強い採用担当者ほど、交渉の全プロセスを通じて目標金額を念頭に置く傾向にあった。一方、予防焦点が強い担当者は、交渉が決裂したり手詰まりになったりすることを恐れるあまり、不利な条件を受け入れてしまいがちだった。

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