マニラ郊外の貧困地域で見た
驚くべき顧客の現実

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世帯収入1日2ドル以下の家庭でモバイル教育とフェイスブック・・・潜在顧客の生活様式やリープフロッグ(飛躍的進歩)の実情は、市場に出向かなければわからない。そして「オフィスから飛び出せ」という姿勢は、経営幹部にこそ重要であるとアンソニーは説く。


 昼下がり、我々はある女性の自宅にたどり着いた。いま通ってきた細い路地には、屋台から漂う料理の匂いと、下水やゴミの悪臭が混じり合って充満している。道すがら、火曜日の午後なのに暇そうな若い男たちが我々を疑いの目で睨んでいた。この辺りではあまり見かけることのない白人を一目見ようと、子どもたちが追いかけてきた。道端の鳥かごには、午後の闘鶏に向けて臨戦状態の鶏たちが入っていた。

 我々はフィリピンの首都マニラの郊外、リサール州の貧しい地域にいた。新たな成長機会を探る現地の企業とともに、フィールド調査を実施するためである。我々がインタビューしたのは、世帯収入が1日2ドル以下の人々、いわゆる「Eクラス」に分類される顧客である。ただし訪問先の女性は、低収入とはいえ地元のコミュニティでは重要な人物であった。400の家庭(合法的な居住者と不法占拠者の両方)がライフラインにアクセスできるよう支援し、住民たちに共通の問題を解決すべく努めていた。

 想像通り、女性の小さな家には現代的な家電製品や設備などはほとんどなかったが、壁に彼女の息子が着飾って写っている学校の集合写真があった。それに気がついた我々は、どうやって息子に教育を受けさせたのか尋ねたところ、彼女は誇らしげに話し始めた。ブロードバンドにアクセスできるプリペイド式のカードを使って、家族の携帯電話で授業を受けさせたのだという。さらに、携帯電話で他に何をしているのかも尋ねたところ、彼女はフェイスブックもやっており20人以上の友達もいるという。

 有名なマズローの欲求段階説によれば、こうした低所得層であれば生理的欲求(食事、水、睡眠)が第一の関心事となるはずである。もちろん、それはそうなのだが、テクノロジーが発達して世界中に行き届いた結果、我々は驚くような現実を目にするようになった。我々が訪問した別のEクラスの家庭には、36インチの液晶テレビとカラオケのセットがあった。

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