組織3像が人材3像を決める

日本企業の地殻変動

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日本企業のグローバル化をどう定義するか。この問題への解としての枠組みは、いまだ日本の企業経営の現状と将来に即した形で提示されていないようだ。そもそも現在の日本企業は、程度の差こそあれ、グローバル化の影響を受けている。本連載では、日本的な経営と外資的なそれが混在するこの状態を「まだら模様」と呼ぶ。この「まだら模様」の在り方を考えることで、日本企業における組織と人材の目指すべき方向性を明らかにする。

日本的経営と外資的マネジメントの混在

 日本企業のグローバル化、特に人材面でのグローバル化はうまくいっているのだろうか。グローバル人材の調達・開発はビジネスの必要性を満たしているのだろうか。私を含めて「大苦戦中」と思っている方が相当いるのではないか。他方で、グローバル化で先行する一部の欧米企業やアジア企業において、グローバル経営、特に人と組織のマネジメントをどうすればよいかという先行事例や理論やモデル、いわば「薬」はすでにたくさんある。しかし、どうも「外来薬」(外資的経営手法)の効き目が芳しくない。薬を投与する対象(日本企業)への診断を改善すべきか。それとも、新薬の開発が必要か。

キャメル・ヤマモト
デロイト トーマツ コンサルティング
グローバルマネジメントインスティテュート ディレクター
ビジネス・ブレークスルー大学 教授

外務省、外資系コンサルティング企業を経て現職。組織・人材面で日本企業のグローバル化を支援するコンサルティングに従事。2013年9月から日本企業の組織・人材のグローバル化について新しい見解・方法論を模索するリサーチに集中している。主な著書に『「世界標準」の仕事術』(日本実業出版社)、『グローバルリーダー開発シナリオ』(日本経済新聞出版社)、『グローバル人材マネジメント論』(東洋経済新報社)など多数。

 このように問いかけるとき、私は暗黙のうちに、純粋な日本企業に対して、タレントマネジメントのような外資系で開発・処方された薬を投与してグローバル化する、というイメージを抱いていた。ところがこのイメージは、出発点としての現在像(純・日本企業)も将来像(グローバル企業)も間違っているようだ。まずはその理由を述べてみたい。

 第1に、出発点の「純・日本企業」という想定だが、日本を代表する、日産、JT、日本板硝子、武田薬品、電通、LIXILなどの大企業は、組織・制度・人材面から見ると、もはや「純粋な」日本企業とはいえないのではないだろうか。これらの企業は、おそらくグローバル化の必要に迫られて外国企業の買収や外国人・在日外資系のトップ経験者をCEOとして迎えるなど、部分的に外資系企業になっている。日本的な経営と外資的なそれが混在するその状態を俯瞰すれば、「まだら模様」に見える。

 第2に、これらの企業が買収などで手に入れた外国人組織は、人材・組織面でのグローバル化を進めているが、ご本尊の日本人組織のほうはグローバル化のスタートラインに着いたばかり。そもそも、合体しただけではグローバル化に成功したわけではなく、先行するトップクラスのグローバル企業の業績にはまだ追い付いていない。楽観的に見れば、さらなる進化(グローバル化)によって業績を向上する余地が十分に残っているといえる。

 いずれにしても、これらの企業は部分的に外資化しており、私が従来想定していた純・日本企業とは異なる経営となっている。先に挙げた日本企業以外にも、成長の軸足を海外に移した日本企業は多数あり、部分的に外資化しつつある。

 日本企業の「現状」が変化すれば、当然「組織の将来像」も変わる。例えば、武田薬品のビジョンは、かつては日本人の経営陣だけによる同業他社(純・日本企業)と似たようなものだったが、外資的マネジメントの「移植」が急速に進んだ数年前から、その将来像が大きく変わった。

 組織の現在像(現状)と将来像が、純・日本企業的な経営から外資的なそれへと移行すれば、当然、現状と将来をつなぐ変革像(変革プロセス)も変わる。そして、「現在像・将来像・変革像」という組織の3像が変われば、人材の3像も大きく変わる。つまり、組織像と人材像について根本的な「再計算」が必要になってくる。

 もっとも根本的な再計算はすこぶる大変で、解が出る保証もない……大きな壁に直面していた2013年秋、幸いにも筆者はこの再計算に日々取り組む機会を得た。本連載では、そこからブレークスルーしたアイデアを、「グローバル人材」に焦点を合わせて紹介する。

 まずは組織の3像(現在像と将来像と変革像)における地殻変動的な変化と、それがグローバル人材の3像の変化に与えるインパクトについて説明しよう。 

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