同じ製品でもメッセージの送り方で
支払う額が変わる

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行動を起こすとき、得られるメリットを重視するか、リスク・損失の回避を重視するか。この「モチベーションの焦点」(促進焦点vs予防焦点)は人々の消費行動に影響を与える。適切な広告メッセージを送ることで、製品への支払意思額が増えるという。


 コロンビア大学の学部生が1人、シャーマーホーン・ホールの奥深くへと進んでいく。その地下には、私が勤めるモチベーション・サイエンス・センターの研究所がある(窓があるとありがたいのだが、致し方ない)。学生がここに来たのは、アンケートに答えて謝礼の5ドルを受け取るためだ。回答を終えた彼は5ドルの他にお礼のギフトとして、コロンビア大学のロゴの浮き出し模様が入った素敵なマグか、ビック製の使い捨てペンのいずれかを選んでよいと伝えられる。そして選ぶ際に、実験者は次の2つのうちいずれか一方を告げる。

1.「マグを選んだら何を得られるか、そしてペンを選んだら何を得られるかを考えてください」

 または、

2.「マグを選ばなかったら何を失うか、そしてペンを選ばなかったら何を失うかを考えてください」

 学生はマグを選ぶ(ほぼ全員がマグを選ぶ。ペンはわざと粗末なものにしてあるからだ)。ここで実験者は次のように尋ねる。「このマグの値段はどのくらいだと思いますか?」。面白くなるのはここからだ。

 この学生が先ほど回答したアンケートには、彼の「モチベーションの焦点」を測る質問が含まれていた。自分の目標を、進歩するためのチャンスと捉える(促進焦点)か、あるいは安定を維持し物事をスムーズに進める機会と捉える(予防焦点)かである。人は皆これらの両方をある程度持っているのだが、ほとんどの人はどちらか一方の焦点をより強く持つ傾向がある。

 実験の結果はこうなった。学生にギフトを選ばせる時の頼み方が、本人のモチベーションの焦点に合っていれば、その人はマグの価値をより高く評価するのだ。つまり、促進焦点型の人には「何を得られるか」を考えてもらい、予防焦点型の人には「損失を防ぐこと」を考えてもらうということだ。そうすると、マグの価値は実際に50%ほど高く評価される。

   (注:青字の価格はモチベーションの焦点に一致した場合)

 あなたはこうつぶやいているかもしれない。「でも、実際に自腹を切るとなったらどうだろう。それでも支払額は本当に増えるのか。モチベーションの一致にはそんなに大きな効果があるのか。いやそもそも、少しでも効果があるんだろうか?」。研究者も同じ疑問を持った。

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