インプットではなく、
アウトプットにフォーカスする

シュロモ・ベンハーIMD教授に聞く「企業内学習」入門(後編)

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企業内学習の重要性が増す今、実際にどのように推進していくべきか。従来の研修/トレーニングとの違いはどこにあるか。前編に引き続き、グローバル人材育成のエキスパート、シュロモ・ベンハーIMD教授に聞いた。

 

ラーニングはアウトプットを重視する

ラーニングはトレーニングと異なると言われましたが、具体的にはどう違うのでしょう。

 決定的な違いは、インプットにフォーカスするのではなく、アウトプットにフォーカスするということです。アウトプットとは、環境変化を明確に認識し、有効な行動を生み出し、実際に成し遂げる実行力のことです。つまり、良い業績や良い数字を生み出すための行動変化こそがアウトプットであり、ラーニングとは「行動変化を生み出す何か」を提供するということです。

 トレーニングでは何を教えるか、どのような訓練を行うかに力点が置かれていました。学問の世界であれば、勉強の目的は知識の獲得にあるので、行動変化を計測する必要はないのです。しかし、企業社会では単に知識の豊富な人材ではなく、環境変化に適応した行動を取れる人材が求められます。そして彼らの行動変化が業績向上につながらなければ、意味がないのです。

OJTという形であれば、日本企業は取り組んでいます

 私もOJTの重要性は十分に認識しています。現場では、対象者の行動変化が手に取るようにわかるからです。学生時代に私は、フランス料理店でウェイターのアルバイトをしていました。入店して間もないころ、スプーンとフォークを片手で操って肉をお客さまのお皿にサーブする機会がありました。しかしうまく手が動かず、間違ってお客さまのスカートに肉を落としてしまいました。ところが1年後、レストランのベストウェイター賞を獲得するほどに上達したのです。私の行動変化がどのようなものだったか、周囲の目にも明らかだったことでしょう。

 ここでカギを握っているのは、レストランのマネジャーです。フランス料理店のサービスリーダーとして、スタッフの行動がどのように変わるべきかを明確にし、変化を促すために何を伝え、何を見せればよいかを自覚し、実行していくのです。それはビジネスリーダーに大きな責任を課すと同時に、リーダー自身が成長する機会ともなりえます。

 OJTでそこまで意識的にできていればよいのですが、実際には「背中を見せて育てる」「暗黙のうちに伝える」ところに留まっているのが現状ではないでしょうか。詳細は『企業内学習入門 ~戦略なき人材育成を超えて』で述べていますが、仕組みを考え、また、その効果を計測するという意味でも、企業内学習が必要なのです。

IMDで授業を行うベンハー教授。

行動変化は計測できるものでしょうか。

 それほど難しく考える必要はありません。たとえば、1週間に100足の靴を売る営業マンに、交渉術をはじめとするセールス関連スキルを教えたとします。その彼が、実際にどのくらいの靴を売れるようになったかを追跡調査するのは簡単で、ラーニング実施前のパフォーマンスと、実施後のパフォーマンスを比較すればよいのです。

 顧客志向というトピックについても、「顧客維持率」「顧客満足度」などの指標があるので計測は可能です。指標を上げるための行動を規定し、その行動を促すような学習的介入を行うことで、最終的にどれぐらい上昇したかを見ればよいというわけです。もちろん、これらの指標には他のさまざまな要因の影響もありえますが、それらを極力排除しながらラーニングの価値を計測することは十分に可能です。

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