組織を黙々と支える陰のヒーローとは

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職場には「促進焦点」型と「予防焦点」型の人材がいる(前回の記事)。後者は、安定の維持やミスの回避を重視するため、その功績は目立たない。しかし花形ではない任務でも黙々と丁寧に取り組み、物事を順調に回しているのはこうした人たちだ。たまには彼ら彼女らを陰のヒーローとして称えてはいかがだろう。


 1998年の終わりに、NASAは待望のロボット宇宙探査機「マーズ・クライメイト・オービター」を打ち上げた。そのミッションは、火星の大気のデータを収集することと、「マーズ・ポーラー・ランダー」(翌年に火星に着陸するはずだったが失敗)との通信をリレーすることだった。およそ10カ月後に探査機は赤い惑星の上空に到達したが、周回軌道に乗るはずだった時点で行方不明になってしまった。

 探査機は誤って、計画していた高度より100キロメートルも火星の地表に近い軌道に入ってしまったのだ。それは正常に動作できる限界高度の25キロも下だった。火星の周回軌道に乗る代わりに大気中に(ひょっとすると空中分解しながら)突っ込んでしまい、アメリカの納税者が納めた1億2500万ドルとともに永遠に失われてしまったのである。

 後でわかったことだが、問題は単位の変換にあった。NASAのエンジニア・チームはメートル法(NASAが1990年に採用した標準)で仕事をしていた。それに対し、オービターとそのナビゲーション・システムの構築を支援していたロッキード・マーチンのエンジニアたちはイギリス式のヤード・ポンド法(ポンドやインチなど)を使っていたのだ。

 最初に手を打っておけば簡単に防げたミスなのに、どうしてこれほど大きな過失が起こってしまったのか。そう尋ねられたNASAジェット推進研究所の管理責任者トム・ギャビンはこう答えた。「チェック・アンド・バランスのプロセスがなぜか機能せず、ミスの発見と修正ができませんでした」

 組織(や個人)が、重大で高くつく無様なミスを犯すと、大きな注目を集める。対して、注目に値するのにほとんど顧みられないのは何だろうか? それは、「予定通りに物事が進むこと」である。そのために、私たち人間のおよそ半数――「予防焦点」を持つ人々――は、認められるべき功績を認めてもらえない。

以前にも書いたように、予防焦点(prevention focus)を持つ人は、目標を達成できなかった時に「何を失うことになるか」を重視する。安全でいることを望み、すでに手に入れたものを守ろうとする。その結果、勤勉で綿密、分析的であり、目標達成を阻む過ちを避けるためには労をいとわない。物事をスムーズに進めるのが得意なのである。

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