人は価格の「公平性」に強く反応する

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人は経済合理性だけで動かない。たとえ料金体系の変更が顧客にとってメリットがある場合でも、「公平性」を欠くと思われれば反発を招く。動画配信で急成長中のネットフリックスも、かつてそれで痛い目を見たことがある。本誌2014年7月号の特集「良い価格 悪い価格」関連記事、第4回。


 初期のネットフリックスは、配送によるDVDレンタルのみを運営していた。その後2011年に、同社は動画のストリーミング配信とDVDレンタルのサービスを切り離した。これはビジネスの教科書に忠実な戦略だ。実際にハーバード・ビジネススクールでは、経済的なメリットに基づく意思決定が企業と顧客の両方に恩恵をもたらしうる事例として取り上げられている。

 教科書のロジックはこうだ。すべての会員から一律に月10ドルの利用料を徴収していても、DVDレンタルとストリーミング配信の価値は会員によって異なる。おおむね、会員の35%はストリーミングに10ドル、DVDに2ドルの価値を置いている。別の35%はストリーミングに2ドル、DVDに10ドル。残る30%の会員はそれぞれに8ドルの価値を見出している。そこで、「DVDレンタルのみ」と「ストリーミングのみ」の会員に分割(アンバンドル)して料金をそれぞれ8ドルにすれば、会員の70%はより多くのメリットを得る(2ドル安くなる)、というわけだ。映画ファンはDVDのみに8ドルを払い、ユーチューブ好きはストリーミングに8ドル払う。せっかちな映画ファンは両方を求め16ドルを払う。この方法はネットフリックス側にとっても得だ。総収入が4%増え、価格が下がったサービスに新規顧客を引き付けやすくなる――。

 ところがご存じのように、2011年にネットフリックスがこのサービス分割を実施すると、別の結果が生じた――怒り、非難、会員脱退が相次いだのだ。アトランタ紙によれば、分割後の1カ月間で同社は100万人近くの会員を失ったとされる。私の父は、同社が自分を「だまそうとした」という理由でいまだに利用を再開しない。

 あるビジネスに対する顧客の認識を理解するには、「公平性」(フェアネス)が重要なポイントとなるようだ。

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