大企業がブレークスルーを起こす
3つの必要条件とは

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企業が目指すブレークスルーの度合いが大きければ大きいほど、投資の規模も不確実性も増える。そのような「大きな賭け」の勝率が高まる条件を、豊富な経験と観察をもとにアンソニーが紹介する。


 イノベーションを成し遂げるために苦戦しているか、と大企業に問えば、そのほとんどはイエスと答えるだろう。だが実際には、大半の企業――特にそれなりの年月にわたって何とか存続してきた企業――は、日常的なイノベーションに関してはきわめてうまくやっている。結局のところ、あなたのラップトップは(まだ使っていればの話だが)10年前のものよりも格段に信頼できる。テレビの画質もはるかによくなっている。携帯電話の音声もより明瞭になり、着信エラーの頻度も減っている。シャンプーを使えば、洗髪後の清々しさが以前よりも増している。歯磨き粉を使えば、以前よりもずっと爽快な感覚が口内に残る。

 企業が苦戦するのは、既存のカテゴリーを再定義したり、まったく新しいカテゴリーを創出したりするブレークスルーに取り組む場合だ。大企業にはそれは成しえない、というわけではない。アップルは過去10年の大半にわたり、次々と続くブレークスルーの波に乗ってきた。アマゾンは自社内部のIT能力を、〈アマゾン ウェブ サービス〉(AWS)という数十億ドル規模のクラウドコンピューティング・サービスに変貌させた。またネスレは〈ネスプレッソ〉ブランドの下で、コーヒーメーカーと関連消耗品の大規模事業を創出した。

 しかし上記のような革新の事例を調べていると、その成功は往々にして並外れたセレンディピティ(何かを探している時に、探しているものとは別の価値あるものを見つける才能)か、カリスマ的な創業者の強権的な手法に由来しているようにも思えるかもしれない。また、大きな賭けが期待外れに終わったケースも多数ある。したがって、企業の上級幹部たちが我々(イノサイト)に最も頻繁に尋ねるのが次の質問であるのも無理はない――「ブレークスルーを見込んだ大きな賭けの成功確率を高めるには、どうしたらよいのか?」

 我々は企業のブレークスルーについて調査し、またみずから巨大企業のイノベーションを支援してきた。そこには以下が含まれる――インドの心臓ペースメーカー市場を再定義したメドトロニック、街角のドラッグストアを慢性病患者のケアセンターという破壊的メカニズムに転換したウォルグリーン、プライベート・バンキングを改革した、フォーチュン100に名を連ねる某金融サービス企業。これらの経験から、大企業がブレークスルーに成功するチャンスが最大になるのは、次に挙げる3つの条件がそろった時であると我々は考えている。

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