現状を変えるために真実を語って「失うもの」

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「自分にこれ以上嘘はつけない」「もはや辞めるしかないか」-―一見、他に道はないように思える事態であっても、勇気を持って真実を明らかにすることで、悪しき現状を変えられることがある。そんな逸話をブレグマンが伝える。


 数カ月前、ポール・フランコはヘルスケア関連の企業に就職し、パートタイムで働き始めた。この会社は市場において、そして彼自身にとっても、大きな可能性を秘めている――そうポールは私に語ってくれた。

 だから、彼が電話をかけてきて憤慨しながら「辞めるつもりです」と言った時には、少し驚いた。

 そこで私たちは、この問題について話し合うことにした。会社に留まる利点は山ほどある。勤務時間を自由に選べるし、好きな場所で遠隔勤務ができる。望む仕事をやりながら自分の目標を追求できる。そして十分にお金を稼ぎながら、世の中をよくすることができる。どれも彼にとっては重要なことだ。

 素晴らしいことばかりなのに、何が問題なのか。それはただ1つ、CEO兼創業者でもある上司だった。

 ポールは言う。「彼はまったく一貫していないんです。ある展望を口にしたかと思うと、また別のことを語る。焦点が定まらず、不明瞭で、非現実的です。そして何より困るのは、社員はもとより潜在的な投資家たちとも信頼関係を損ねているのです。私が他の社員にも伝えていた彼との約束まで破ろうとしました。CEOはわが社にとってマイナスです。留まれば、私自身の評判を損なうことになるのが心配なんです」

 ポールは辞めるべきだろうか? 魅力的な利点は多々あるものの、答えは明白なように思える――当然辞めるべきであろう。ただし、CEOが気まぐれだからではない。どんなにお金が必要であろうと、自分の評判を落としてまで働く価値はないからだ。

 私はそう助言したい衝動を抑え、最後に1つだけ聞いてみた。「CEOには、私に話したようなことを伝えましたか?」

 彼はためらいながら答えた。「いや、こんなにはっきりとは言っていません」

 ここで私の答えは明確になった。それは先ほどの考えとは違う。「いま辞めるのは大きな間違いです。もっといい考えがありますよ」と私は伝えた。

 ポールの置かれた状況は、私が頻繁に遭遇するものだ。組織や人間関係が停滞もしくは悪化していて、それをどう修復すればいいのかを誰もわかっていない。先週だけでも、部下との関係悪化、業績の低迷、そして不幸な結婚生活に悩んでいる人たちからの相談を受けた。負のパターンにはまったまま暗い現実を生きるか、それともそこから立ち去るか――選択肢は2つしかないように見える。

 だが、私は第3の選択肢を提案したい。思い切って真実を語るのだ。

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