仕事選びは「情熱」より「価値観」を優先せよ

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キャリアの選択は人生で最も難しい課題の1つだ。多くの判断材料が挙げられるが、心理学者ハルバーソンは1つの説得力ある基準を示す。それは「モチベーションの焦点」だ。自分が得意なのは「攻め」か「守り」か――それを知れば、自身に合う業界・職種がある程度わかるという。


 仕事を選ぶこと(または変えること)は、ほとんどの人にとって困惑と不安に満ちた経験である。「情熱に従え」、「心底好きなことを仕事にせよ」などと言われることも多いが、ジョージタウン大学助教授のカル・ニューポートが著書So Good They Can't Ignore Youで指摘しているように、このアドバイスはあまり役に立たない。私は大学を卒業した時、好きなこと(like)はたくさんあったが、それらは愛する(love)とか情熱(passion)というには遠く及ばなかった。

 幸せになれる仕事を選びたいと誰もが考えているが、どうすればその仕事を知ることができるのだろう。研究によれば、人は未来の行動についてどう感じるかを予測することがきわめて下手であるという(詳細はダン・ギルバートのTED動画「私たちが幸せを感じる理由」〈日本語字幕あり〉を参照)。心底好きになれるだろうと考えて選んだ仕事を、結局嫌いになってしまうケースは多々ある。それは無理もないことだ。投資銀行家、あるいはアーティストや大学教授など何であれ、その職を手にすれば幸福になれるかどうかなど、実際に仕事に就く前にわかるはずがない。人類の歴史において、その職業が完全に事前の想像通りだったという人は1人でもいるのだろうか。

「情熱」や「幸せへの期待」が職業選択の指針にならないとすれば、いったい何が役に立つだろう。まずは、自分のスキルと価値観に合った仕事を選ぶことから始めてみてはどうか。自分のスキルと価値観なら(望むらくは)ある程度はわかっているだろうから、出発点としては役に立つだろう。

 そして、同じように重要だがそれほど知られていないポイントがある。自分の「モチベーションの焦点」に合った仕事を選ぶ、ということだ。

 コロンビア大学ビジネススクールのトーリー・ヒギンズと私の新著Focusや、最近の我々のHBR論文"Do You Play to Win ― or to Not Lose? "(邦訳は本誌2014年9月号に掲載予定)でも述べているが、目標の達成に向けてモチベーションを高める方法は2つある。

 一部の人々は、仕事や人生における目標を「向上」や「成就」、「報酬獲得」の機会と考える傾向がある。目標を達成した時に手に入るものに目を向けるのだ。目標をこのように捉える人は、「促進焦点(promotion focus)」を持っている。

 もう一方の人々は「安全」を重視し、努力して得たものを「失わないこと」が大切だと考える。これは「予防焦点(prevention focus)」と呼ばれる。危険を避け、責任を全うし、他の人々から頼りにされる人間になること、物事をスムーズに進めることを重視するタイプだ。

 誰でもこれら両方の焦点を用いているのだが、仕事や恋愛、育児といった個々の領域において、私たちは促進焦点と予防焦点のいずれか一方をより強く持つ傾向がある。そして促進焦点型の人と予防焦点型の人はモチベーションが異なるがゆえに、その強みと弱みもまた異なる。この点を知っておくことが重要だ。少し例を挙げて説明しよう。

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