「会話の知能指数」(CI)は、こうして高める

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「会話の知能指数」(Conversational Intelligence:CI)とは、知性ある会話によって組織力や業績を高めるという概念だ。提唱者のジュディス・グレイザーは神経科学の理論を会話力に応用し、同テーマの著書はダニエル・ピンクやアンジェラ・アーレンツにも絶賛されている。HBR.ORGの連載記事、第1回は会話の齟齬を引き起こす身体的な要因と、CIを高める初歩のコツをお伝えする。


「会話の知能指数」(Conversational Intelligence)という概念を私が考案し最初の実験を行ったのは、1984年のことだ。当時、私はユニオン・カーバイドの依頼を受け、営業部の17人の有能な幹部たちを支援することになった。彼らは重要な契約の入札に敗れる可能性に直面していた。私の任務は、彼らのスキルを高めて競合7社を退ける方策を考え出すことだった。

 2週間余りにわたって、私は幹部たちに顧客との会話を想定したロールプレイをしてもらい、発言内容を図にまとめた。そこには明確なパターンがあった。すなわち、総時間の85%が「意見を述べること」に費やされ、「質問」に当てられた時間はわずか15%にすぎなかった。そのうえ、ほとんどの質問は実際には問いかけを装った意見の表明だった。幹部たちは延々と話し続け、相手を自身の見解に同調させようと試みていた。にもかかわらず、その間ずっと、自分たちは建設的で有意義な会話をしていると思い込んでいた。

 その後も私は数千時間をかけて、企業幹部たちの会話を実際の仕事の現場で観察した。見込み客の検討、業績評価、事業開発、イノベーションの取り組みなどさまざまな状況だ。それらの経験から、こう断言できる――会話の齟齬は非常によく見られる問題である。人は実際には話がかみ合っていないのに、相互に話し合えていると思い込むことがよくあるのだ。そのような状況で続いているのは、対話ではなく独白だ。

 生物学的には、この状況は以下のように説明できる。私たちが自己表現する時は、より多くの報酬ホルモンが体内で分泌され、気分が爽快になる。話せば話すほど、この爽快感は増していく。やがて体が高揚感を渇望し始め、話し手である私たちは会話の流れに気が回らなくなる。話し手が気分爽快という報酬を受けている傍らで、聞き手はといえば意識的にせよ無意識にせよ、次のように感じているおそれがある。自分は会話から締め出され、透明人間のようで、とるに足らない小さな存在であり、拒絶されている――。このような感情に陥った時は、肉体的な痛みを感じた時と同じ神経化学物質が分泌される。

 拒絶された気分になると、「闘争・逃避」反応が起こり、コルチゾールが分泌される。この副腎皮質から分泌されるホルモンが神経系統を浸すと、前頭葉前部皮質の機能、つまり実行機能を有する脳の働きが停止し、代わりに扁桃体、すなわち脳の下位領域の働きが活発になる。さらに、会話を司る脳の働きは約12~18秒ごとに停止して(会話内容の)評価と処理を行うのだが、これが会話をいっそう難しい作業にする。つまり私たちは、相手の言葉にのみ注意を払っているのではなく、自分自身の思考にも同じくらい意識を向けているのだ。

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