事業の質はどちらが良いか?
財務比率分析で考える企業の総合評価

ソフトバンクとドコモのケースで学ぶ会計・ファイナンス入門 【第5回】

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企業を総合的に評価していくための有効なツールの1つが財務比率分析である。この財務比率分析の中心はROEと成長性だ。数字と数字の関係を計算しながら、ソフトバンクとドコモを総合的に評価していく。

総合的に評価する「財務比率分析」

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西山茂(にしやま・しげる) 早稲田大学ビジネススクール教授。 早稲田大学政治経済学部卒。米ペンシルバニア大学MBA修了。監査法人ト-マツ、㈱西山アソシエイツにて会計監査・企業買収支援・株式公開支援・企業研修などの業務を担当したのち、2002年より早稲田大学。2006年より現職。学術博士(早稲田大学)。公認会計士。

 これまで損益計算書、貸借対照表、キャッシュフロー計算書、セグメント情報から企業を読む方法について、ソフトバンクとドコモをケーススタディとして取り上げながら学んできた。その結果、ソフトバンクは国内移動通信事業やインターネット事業などの高収益をベースに、大きな借り入れによって米国の移動通信会社であるスプリントの巨額買収に踏み切り、大幅な規模拡大を実現したものの、財務的な強さが低下していることが分かってきた。一方で、ドコモは、日本国内の携帯電話事業に絞り込んで高収益を継続し、圧倒的な財務の強さと安定した事業運営を行っていることが分かった。

 ただ、財務データを見る場合には、単に数字そのものを見るだけではなく、損益計算書や貸借対照表の読み方の中で各項目の構成比率を集計したように、数字と数字の関係を見ていくことも有効である。ここでは、数字と数字の関係を計算しながら、企業を総合的に評価していくツールである財務比率分析について学んでいく。

財務比率分析の方法

 企業を総合的に評価していくための有効なツールの1つが財務比率分析である。この財務比率分析の中心はROEと成長性である。それでは、まずROEから見ていこう。

 ROEはReturn On Equityの頭文字である。これは、株主の出した資金(Equity)に対する儲け(Return)の比率のことである。実際に計算する場合は、株主にとっての儲けを意味する「当期純利益」を、株主が企業に投資している資金を表す「自己資本」で割って計算する。このうち自己資本はこれまで見てきた純資産とほぼ同じものである。つまり、ROEは、株主からみて投入した資金がどの程度の儲けを生み出しているのかといった投資効率を評価する指標なのである。この比率が高いと株主から見た投資効率が高く、一般に株価も上がりやすい傾向があり、日本企業の中にもROEを財務の目標として掲げる企業もある。ちなみにROEの平均数値は、日本では2013年3月期で8%程度、2014年3月期で9%程度となっている。

ROE = 当期純利益 ÷ 自己資本(ほぼ純資産と同じ)

 また、このROEについて、なぜ高いのか、また今後どのようにすればより高くなるのかを分析する際に、ROEを3つの数字の掛け算に分解する方法がよく使われている。これを、米国の有名な化学会社であるデュポン社が使い始めたということで、デュポンシステムと呼んでいる。具体的には、以下のようにROEの分子である当期純利益と分母である自己資本をもとに、分母と分子に売上高と総資産をそれぞれかけることによって、3つの比率の掛け算に分解していくものである。

ROE = 当期純利益 ÷ 自己資本

   = 当期純利益/売上高 × 売上高/総資産 × 総資産/自己資本

     (当期純利益率)   (総資産回転率)  (財務レバレッジ) 

 これを見ると分かるように、3つのうちの最初は、最終利益をベースにした収益力、つまり利益率を表す売上高当期純利益率である。次の2つ目は、資産に対してどの程度大きな売上高をあげられたのか、つまり、資産をどの程度効率よく使って売上高につなげられたのかを表す総資産回転率である。

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