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ソフトバンクとドコモのケースで学ぶ会計・ファイナンス入門 【第1回】

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早稲田大学ビジネススクールの教授陣がおくる「早稲田大学ビジネススクール経営講座」。2人目は会計・ファイナンスがご専門の西山茂先生だ。ソフトバンクとドコモは誰もが知っている企業だが、会計・ファイナンスの観点から見れば、様々な相違点が浮かび上がる。ビジネスパーソンにこそ押さえておいて欲しい知識が、全6回で学べる。

なぜ会計とファイナンスを学ぶべきか

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西山茂(にしやま・しげる) 早稲田大学ビジネススクール教授。早稲田大学政治経済学部卒。米ペンシルバニア大学MBA修了。監査法人ト-マツ、㈱西山アソシエイツにて会計監査・企業買収支援・株式公開支援・企業研修などの業務を担当したのち、2002年より早稲田大学。2006年より現職。学術博士(早稲田大学)。公認会計士。 主な著書に、企業分析シナリオ第2版(東洋経済新報社)、戦略管理会計改訂2版(ダイヤモンド社)、入門ビジネス・ファイナンス(東洋経済新報社)出世したけりゃ 会計・財務は一緒に学べ! (光文社新書) などがある。

 ソフトバンクの株価が上昇している。時価総額は、日本企業の中でトヨタ自動車の約19兆円に次いで第2位の約8兆3千億円(2014年5月16日時点)。競合するNTTドコモの約7兆2千億円、KDDI(au)の約4兆8千億円と比較しても株式市場の評価は抜群である。これは2013年度に米国第3位の携帯電話会社スプリント、パズドラで有名なオンライゲームのガンホーなどを買収等によって子会社化し、売上高や営業利益が大きく増加したことが理由のようだ。

 しかし、利益のベースである携帯電話契約数の国内シェアでは、徐々に高まってはいるものの、2014年1月末時点ではドコモの45.4%、au(KDDI)の29.0%に次いで、第3位の25.5%に止まっている。また、2013年7月には、米国の有名格付会社のムーディーズが大型買収による多額の借入を理由にソフトバンクの格付けを引き下げており、「ソフトバンクは危険だ」という声もある。このように、評価が分かれるソフトバンクだが、実際の状況はどうなのであろうか。

 この連載では、財務データをもとにソフトバンクをドコモと比較しながら、2社の現状、採用している戦略、ソフトバンクの評価が分かれる理由などを分析していく。

 ここで会計とファイナンスの内容について簡単にまとめておく(図表1参照)。まず会計は、企業の立場から数字を扱っていくものである。具体的には企業の外部への業績の報告書である決算書の作成や分析に関係する財務会計と、企業の内部で経営管理のために数字を使うことに関係する管理会計の2つに分かれている。このうち、財務会計によって作られる決算書からは、競合企業、顧客企業、さらに自社の状況を数字で確認することができ、管理会計のいろいろなツールからは、社内のどの事業・地域・部門が儲かっているかといった業績管理のための情報や、設備投資を行う際のシミュレーションなど適切な意思決定をするための情報などを得ることができる。

 一方でファイナンスは、企業の外にいる株主をはじめとする投資家や、資金を貸している銀行などが企業をどう評価したらいいのか、という考え方がベースとなっている。ある意味で投資家の理論である。このファイナンスの考え方を理解すると、どのような企業が投資家から評価されるのかが理解でき、結果として株価や時価総額を高める方向性や、資金を借りやすくするための方向性が見えてくる。

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図表1

 連載を通して、決算書の読み方を中心とした財務会計とファイナンスのポイントについて取り上げていく。

 具体的には、財務会計については、損益計算書・貸借対照表・キャッシュフロー計算書という3つの財務データの読み方、事業や地域ごとの状況が分かるセグメント情報の読み方、財務比率分析の意味と活用方法、ファイナンスについては企業価値・株主価値の意味と格付けとの関係を取り上げていく。

 なお、ソフトバンクは国際財務報告基準(IFRS)、ドコモは米国会計基準と財務データのベースとなる会計ルールが違っている。ただ、大きな視点からの分析に影響を与えるような相違点はないため、一部調整をしながら比較をしていく。

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