ナダルが教えてくれたこと:
ときには感情を露わにしよう

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職場では感情をコントロールすることが求められる。しかし、それは感情をひたすら押し殺すことと同義ではない。感情とはすなわちエネルギーであると捉えるブレグマンが、仕事における人間らしさとは何かを問う。


 ラファエル・ナダルは、私のヒーローだ。全米オープンで2度の優勝を成し遂げた。圧倒的な運動能力、驚くべき集中力。他の追随を許さない技術。そして不屈の精神の持ち主でもある。ナダルの試合を見ることは喜びだ。

 と言っても、彼が私のヒーローなのはこういった理由からではない。実のところ、全米オープンの決勝が終わるまでは、私にとってロールモデルとまではいかなかった。

 では何が私を魅了したのか。

 勝利が決まった瞬間、ナダルは泣きながら地面に崩れ落ちたかと思うと、すぐに跳び上がって喜びの声を上げた。そして再びテニスコートにうつ伏せになり、泣きじゃくった。しばらくして立ち上がると、対戦相手のノバク・ジョコビッチと抱き合った。

「何かに全力で取り組むというのは、こういうことなんだよ」。私は一緒にテレビを見ていた11歳の娘イザベルに言った。

 昨今のビジネスの世界では、こういったエネルギーはどこに行ってしまったのだろう? 喜びのあまり跳び上がったり、嬉しさや悲しさから、握りこぶしを突き上げたり涙を流したりすることがあるだろうか?

 さまざまな企業を訪問すると、社員が漫然と机に向かっている姿、会議で居眠りしている姿を見かけることがある。そんな時に私は思う――「人間は、いったいどこにいるのだろう?」

 職場を情緒不安定な人々の集まりにしようなどと言うつもりはないが、生身の人間の働く場であってほしいと思う。

 ナダルはこみ上げる感情を露わにしたが、それまでの数時間は全身をエネルギーで満たしながら、制御された反応と緻密に計算された動きを見せていた。つまり、試合中は感情をコントロールしていた。

 これは適切な行動だ。困難な目的を達成するためには誰でもそうするし、人々は感情のコントロールについては上達している。

 だが試合が終わると、このすべてのエネルギーはどうなるのか。ナダルの試合後の振る舞いは、試合中に抑え込まれたエネルギーが自然にあふれ出たものだった。

 これもまた、適切な行動なのだ。しかし私たちの多くは感情を常に抑え、飲み込んでしまってはいないだろうか?

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