新興企業のサバイバル術:
プロジェクトからプロセスへ

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スタートアップに情熱を注ぐ起業家や人材は、プロジェクト単位で働くことを好む傾向があり、プロセス重視のタスクや組織を「官僚的」として嫌う。しかしこれが、新興企業の存続を阻む落とし穴になるという。組織の創造性と自律性を両立させるのが、起業家に求められるリーダーシップの要件だ。


「なぜ会社を率いるスタイルを変えなければならないのか。このやり方によって、市場へのたしかな足がかりを築けたのに」

 多くの起業家が自信たっぷりにこう言う。企業の成長過程における重大な転換点では、リーダーは重点を置くポイントを変えなければならない。しかし、彼らはそれを認識することなく、現時点まで効果を上げてきた方法にこだわる。そして事業は失速する。主要なチームメンバーや投資家、顧客、サプライヤーの間で混乱が広がる。そして最後には、変化の必要性を理解できなかった過ちが、企業自体の失敗へとつながっていくのである。

 突然やって来るそうした転換点のひとつに、プロジェクトからプロセスへの移行がある。製品を初めて販売し、最初の顧客へのサービスを開始した時に必要となるものだ。プロジェクトとは、特定のタスクのために集められたチームによる1回限りの活動である。1つの目的に特化した限定的な活動だからこそ、最初の顧客を実際に獲得するための柔軟性と機敏性を発揮できる。スタートアップに魅力を感じる人を雇った場合、彼らはスピードの速いプロジェクトを好み、プロジェクトベースのチームで働くことに大きな満足感を覚えることが多い。

 潜在顧客が何をどんな方法で買ってくれるのか――たいていの起業家は、これを見極めるために柔軟性と機敏性が必要だと理解している。しかし柔軟性と機敏性はやがて、信頼性と効率に道を譲らざるをえない。顧客満足を維持し、新たな顧客を獲得するには、製品やサービスを安定して供給しなければならないからだ。信頼性と効率を実現するには、「プロセス・モード」で仕事を進める必要がある。すなわち、タスクをあらかじめ規定された方法で反復的に行い、製品ごとの差異やコストを最小化するのである。

 しかし起業家の大半は、プロジェクト・モードからプロセス・モードへの移行に本能的に抵抗を示す。その言い分として私が耳にするのは「製品をもっと改善するために、まだできることがある」、また典型的なものとして「我々はチームとしてうまくやっている。なぜやり方を変える必要があるのか」というものだ。抵抗を示すのは、起業や製品・サービスの立ち上げを成功させるために雇われた人々も同様だ。なぜ「楽しい」モードを脱し、「官僚的」モード(プロジェクトを愛する人々は絶望を込めて、かつ浅はかにそう呼ぶ)に入らなければならないのか、と問う。

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