勇気をふるう経験こそが、
リーダー育成のカギである

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有効なリーダーシップ開発とは、どうあるべきか。その探求をライフワークとしてきたブレグマンは、2つの要件にたどり着く。学習と実践の境界をなくすこと、そして「勇気」を誘発する場をつくることだ。


 経営委員会の話題はヨーロッパへと移った。テクノロジー企業アレンティクス(仮名)の業績は好調で、前年比約15%増を達成している。ところがヨーロッパ支社だけが低迷していて、ここ5年というもの赤字続きだ。

 しかしこの問題を、誰も議題に乗せようとはしない。ヨーロッパ支社長のジャンは、会議に参加している誰よりも古参で、役員とも親しい。赤字について触れるのはタブーのように思われた。

 この日もいつもと同じように会議は進む。自分はすべてを把握している、と言うジャンに誰も反論しない。アドバイザーとして参加する私は、居並ぶ上級幹部たちを眺めた。その全員から、最近のジャンの仕事ぶりについて不満を聞かされたことがある。「15分の休憩をとりましょう」と私は提案した。

 ここにいるリーダーたちは皆、賢くて博識で有能だ。リーダーシップに関する本を大量に読破し、リーダーシップ能力の査定をクリアしている。一流のビジネススクールの幹部向けリーダーシップ・プログラムを含む、いくつもの研修にも参加している。ことリーダーシップに関しては、誰にも負けないくらい熟知しているのだ。

 ならばなぜ、発揮できないのか?

 答えは簡単だ。リーダーシップについての知識を備えていることと、リーダーとして行動することとの間には天と地ほどの違いがあるからだ。

 リーダーシップについての知識が十分でないという理由で失敗するリーダーを、私は見たことがない。それどころか、知識が十分でないリーダーに出会ったことさえない。難しいのは理論ではなく、その実践である。リーダーとしてどんな言動をなすべきか、という知識は問題ではない。言動によって生じる不快感やリスク、不確実性を引き受ける意思が問われるのだ。

 言い換えれば、リーダーシップにおける大きな課題のほとんどは、「勇気」にまつわるものである。

 勇気を奮い起こすというのは、他者から自分を切り離さず、それでいて他者とは独立して立つことを意味する。つまり、誰もが黙っている時に口を開くことであり、不確かな状況に直面しても動じず、地に足を付け、慎重でいることだ。立場が違っていても――たとえ不実な裏切りに遭おうとも――焦点から目をそらさず、脱線することも取り乱すこともなく、前向きに対応することだ。そして同僚の怒りを買っても、それを拒絶したり自分を閉ざしたりしないことでもある。

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