切り捨てる覚悟が成功のチャンスを呼ぶ

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選択と集中は、企業戦略のみならず個人のキャリア形成においても重要である。しかしえてして机の上のようにいらないものが判断を歪めてしまう。才能(ケイパビリティ)、それを活かせる分野(参入市場)、情熱――3つが交差する1点のみを追求するのが本質である。


 成功している人や組織は、必ずしもさらなる成功を収めるとは限らない。なぜだろうか。私が「明確性のパラドックス」と呼ぶものが、その理由を説明してくれる。これは予測可能な4つの段階に要約することができる。

1.目的を極限まで明確化すれば、成功につながる。
2.成功を収めると、選択肢やチャンスが増える。
3.選択肢やチャンスが増えると、注力すべき対象が広がる。
4.注力の対象が広がると、そもそもの成功を導いた明確性そのものが脅かされる。

 不思議なことに、そしてポイントをあえてわかりやすく言えば、「成功は失敗のもと」なのである。

 これは、かつてはウォール街でもてはやされたが後に破綻した企業に見ることができる。ジム・コリンズは著書『ビジョナリーカンパニー③ 衰退の五段階』(日経BP社)のなかでこの現象を考察し、失敗の主な理由は企業が「規律なき拡大路線」に陥ったからであるとしている。これは企業にとっても、個人のキャリアについても当てはまる。

 もっと個人的な実例を見てみよう。エンリック・サラは、カリフォルニア州ラホヤにある高名なスクリップス海洋研究所で、長年にわたり教授を務めていた。けれども彼は、現在のキャリアは自分が本当にたどるべき道とは少し違うのではないか、という気持ちを拭えなかった。そこで学問の世界を去り、ナショナルジオグラフィックに勤めた。転職の成功によって、ワシントンD.C.にある協会本部での新しい魅力的なチャンスが巡ってきた。

 ところが彼はまたしても、正しいキャリアの道筋に近づきはしたものの、まだ到達してはいないと感じた。成功によって注力の対象が拡散していたのだ。数年後、彼は本当にやりたいことを成すために再び舵を取り直す。現在はナショナルジオグラフィックの特別研究員として、地球規模で政策に影響を及ぼす自身の発信力と専門知識を強みに、相当な時間を遠海に潜って仕事をしている(彼が仕事について語るTED動画〈英語音声のみ〉はこちら)。エンリックが夢の仕事に就くためには、平行して現れた多くの魅力的な道に背を向ける必要があったのだ。

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