「まだ『靴屋のオヤジ』になりきれていない」
リーダーの仕事は現場をヒーローにすること

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実際の現場に立ち、現場の目線で経営を考える。ミニット・アジア・パシフィック新社長の迫俊亮氏は、入社以来この姿勢を貫き通している。なぜ、これが大切だと思うに至ったのか。そこには、マザーハウス社長の山口絵理子氏とともに働いた経験、そして、ある経営者に「ウザい」と切り捨てられた体験が活かされていた。全5回。

300回バットを振り続けて成功を引き寄せる

――仕事に対する現在の姿勢は、マザーハウス時代に培ったものですか。

迫 俊亮(さこ・しゅんすけ)
ミニット・アジア・パシフィック株式会社 代表取締役社長。
1985年3月25日福岡県生まれ。2007年8月、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)社会学部卒。2008年4月、三菱商事株式会社に入社。2008年9月、バック・アパレルの製造小売ベンチャーである株式会社マザーハウスの創業期に参画し、日本での事業拡大、中華圏への進出等に従事。2013 年1月、ミニット・アジア・パシフィック株式会社に入社。東南アジア・中国事業の立て直しを経て、2013年7月より経営企画部長兼海外事業統括部長として営業・マーケティング体制の再構築に従事。2014年1月、同社常務執行役員営業本部長 兼 海外事業統括部長に就任。2014年4月1日、同社代表取締役社長兼営業本部長に就任。世界経済フォーラム(ダボス会議)による Global Shapers に日本の若手を代表するリーダーとして選出。

 そうだと思います。山口(マザーハウス代表取締役社長・山口絵理子氏)をすごいと思ったことはいくつもありますが、とりあえずやってみるという姿勢は前職で学んだことの1つです。マザーハウスの最後に、私は台湾で事業を立ち上げました。途中からはほぼ私1人で取り組みましたが、最初は山口と一緒に行ったんです。そのときに、「この人はなんでこんなに決断が早いんだろう」と驚かされましたよ。

 たとえば、現地で知り合った人と少し話をしただけで「よし、彼をディレクターにしよう」と言われたことがあります。「えっ、もう決めるの?もっとインタビューしないの?」と聞いても「彼にしよう。明日から来てもらおう」って。実は、このやり方は彼女の実体験に基づいているんですよ。100人にインタビューしても、何が正解なのかなんてわからない。だから、ある程度いいなと思ったらやってみて、ダメだったらやり直す。

 私は、どちらかというと考えてから行動する人間でした。でも、やりながら考えないと間に合わないと気づいたんです。リサーチで得られるデータは限られていて、実体験から得られるデータのほうが貴重です。また、行動することは周りに対するコミットメントを示すことでもあるので、協力したいと思ってくれる人が集まってきます。ただ調べているだけでは、「こいつは本気なのか?」と思われていますから。

 どれだけ優秀でも、同じ人間なので、1人ひとりの成功の打率はそれほど変わらないと思います。ただ、彼女のすごいところは、バットを振る回数がめちゃくちゃ多い。普通の人が3回しか振らないところを300回振ってくるのが山口です。だからこそ、ヒットやホームランが生まれると思います。それは彼女と一緒に働いて学んだことの1つですね。

――そのスピード感で事業を進めることに、老舗企業は慣れていないのではないでしょうか。うまくいかないことはありませんでしたか。

 そうですね、老舗企業ということもあって慣れていないと思います。いままでは、新しいことをやってきませんでした。官僚組織のように、新しいことをやって失敗すると批判され、責任を負わされる文化だったからです。これからは、リスクはあっても私が責任を取ります。仮にリスクが発生しても、小さく始めればこのくらいなので問題ない、だからやりましょう、という文化に変えていきたいと思います。

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