ZARAとユニクロが直面する価値の三すくみ

トレードオフ・マネジメント【最終回】

1

ユニクロはコストを追求する一兎戦略を取っていると考えられるが、視点を変えてみると、ファッション性対コストというトレードオフ、品質対コストというトレードオフにも直面していると考えることもできる。視点を変えてトレードオフを眺めなおすことによって、2つの目的をバランスさせて追求する道が見えてくる。トレードオフ・マネジメント最終回。

ユニクロはコスト追求に走る一兎戦略か

写真を拡大
淺羽・茂(あさば・しげる) 早稲田大学ビジネススクール教授。 1985年東京大学経済学部卒業。94年東京大学より、博士(経済学)取得。 99年UCLAより、Ph. D(マネジメント)取得。学習院大学経済学部教授を経て、2013年より現職。 主な著書に、『競争と協力の戦略』(有斐閣)、『日本企業の競争原理』(東洋経済新報社)『経営戦略の経済学』(日本評論社)、『ビジネスシステムレボリューション』(NTT出版)、『企業戦略を考える』(日本経済新聞出版社)『企業の経済学』、(日本経済新聞出版社)『経営戦略をつかむ』(有斐閣)

 フリース、ヒートテック、ウルトラライトダウンといったヒット商品を世に送り出し、アジアを中心としたグローバル事業も好調なユニクロ。最近では、ファッション性も取り入れた”Life Wear”というコンセプトを打ち出している。しかし、もともとは高品質・低価格の「カジュアル・ベーシック」を提供することを強みとしていた。

 ユニクロは、大量生産による規模の経済、人件費の安い海外での生産、SPAによる中間マージンの排除といったコスト引下げ要因(ドライバー)を積み重ねて、圧倒的なコスト競争力を実現している。ただし、SPAによる中間マージンの排除は、代わりにユニクロが売れ残り等のリスクをすべて自分で負わなければならないことを意味する。SPAで商品が自主企画なので、委託販売ではなく買取だからである。ゆえに、流行すたりのない定番商品を中心に据え、リスクの大きな商品、すなわちファッション性の高い、流行すたりの激しい商品は扱わないようにしていたことは合理的である。つまり、ファッション性とコストとはトレードオフであり、ユニクロはもっぱらコストを追求する一兎戦略をとってきたと考えられるのである。

 それに対して、世界最大のアパレル小売、ZARAを展開するスペインのインディテクス社は、ファストファッションと呼ばれ、ファッション性の高い商品を低価格で提供する。トレードオフであるファッション性とコストのいずれかを追求するのではなく、その両者を追求する二兎戦略をとっているのである。ZARAはどうやって二兎戦略を成功させているのだろうか。

1
無料プレゼント中! ポーター/ドラッカー/クリステンセン 厳選論文PDF
Special Topics PR
今月のDIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー
最新号のご案内
定期購読
論文オンラインサービス
  • facebook
  • Twitter
  • RSS
DHBR Access Ranking