ラグジュアリー・ビジネスの市場構造

プライシングに影響する心理的ファクター

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プレミアム価格を維持し続けてきたラグジュアリー・ビジネスは、いまなお成長の途中にある。とはいえ、一口にラグジュアリー・ビジネスといっても、価格弾力性の点から三層構造に分類される。本誌プライシング特集関連企画、連載第2回。


 ラグジュアリー・ビジネスとひと口に言っても、その市場はプライシングの高低によって3つのカテゴリーに分類でき、ピラミッド状に構成されている。そう指摘するのは、ベイン・アンド・カンパニーニューヨークオフィスのパートナー、エリカ・セロウ氏だ。最下層のカテゴリーは、「アクセシブル」(エントリー高級)。中間層が、「アスピレーショナル」(高級)、そして最上層が「アブソリュート」(最高級)である。

「アクセシブル」に位置するブランドとしては、購入経験のある人も多いコーチやバーバリーなどが挙げられるだろう。「アスピレーショナル」には、グッチルイ・ヴィトン、「アブソリュート」のカテゴリーには一生に一度、清水の舞台から降りるような気持ちで購入する最高級ブランドや、高級腕時計、宝石などが入ってくるのだろう(図表を参照)。

 この3つの層はプライスバンド(価格帯)別に決まっているが、厳密に各層が分かれるというよりも、価格帯やラインナップによって若干各層に重複はある。しかしいずれにせよ、ラグジュアリー・ビジネスを手がける企業にとって、プライシングは大きな意思決定事項である。

「アクセシブルのカテゴリーでは合理性が働き、サイエンスに基づいて決定されるのに対し、アブソリュートのカテゴリーではロジックとは無縁の世界で決められていく」と指摘するのが、ベイン・アンド・カンパニー東京オフィスのパートナー、ゴヴァース健二氏である。

エリカ・セロウ氏
(Erika Serow)

ベイン・アンド・カンパニー、ニューヨークオフィス パートナー スタンフォード大学経営大学院経営学修士課程(MBA)終了。主に米国のラグジュアリー、化粧品、アパレルといった消費財企業や、百貨店、専門店、食品スーパー等の流通企業を中心に、プライシング、成長戦略、拠点拡大、商品開発、M&A等のプロジェクトを手がける。

 アクセシブルとは文字通り「手が届く」であり、財布やアクセサリー、また一部の化粧品など、5万円から10万円の、誰でも手に入れられる価格帯の商品が該当する。研究によっては、コーチバーバリーをラグジュアリーにカテゴライズすることを疑問視する向きもあるとはいえ、この層においては、明らかにノンラグジュアリー商品との差別化が不可欠である。

「ノンラグジュアリー商品の価格と比較して、どの程度の価格プレミアムを設定するかという点が最大の意思決定となります。一般的には、おおむね30~40%のプレミアムが最適な水準でしょう」とゴヴァース氏。「この価格プレミアムをいかに守るかが、大きな課題となっています」。

 セロウ氏も「だからこそ、(アクセシブル層は)自社ブランドと同じカテゴリーにある他社ブランドの価格を丁寧にモニタリングし、他社のブランドの価格がどの程度の幅で動いているかのチェックを欠かさない」と指摘する。つまり、この層の商品は価格弾力性が比較的高いため、ある程度のサイエンスを駆使してプライシングをする傾向があるということだ。

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