日本企業の課題は、ホワイトカラーの生産性

ローランド・ベルガー氏インタビュー(後編)

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ドイツ製造業の強さは、当初から海外展開を見越した経営感覚と、卓越した技術と製品力をもってグローバル・ニッチを追求する徹底した選択と集中にあり(前編参照)、それはマネジメントのあらゆる範囲に及んでいた。日本企業の課題をローランド・ベルガー氏に聞いた。


――ドイツ企業が海外展開をスピーディに行ううえで、他にどのような施策がありますか。

 多くのドイツ企業は、M&Aによってスピーディに規模を拡大させていきます。特にドイツ企業は1つの分野に焦点を当てているため、同じ分野でのM&Aを続けていくことで規模の拡大を図る傾向にあります。ドイツ人はそもそもM&Aに対してオープンな考え方を持っており、海外企業とのM&Aにも抵抗がありません。一方、日本企業はどちらかというと自力成長を望んでいるのではないでしょうか。それも海外展開が上手くいかない一因となっているかもれません。

 もちろん、国内企業でも海外企業であっても、多様な文化的背景のある会社同士を統合することは難しいものです。統合がうまくいく法則を一般化して語ることはできませんが、まずは「異なる文化を尊重する」ということが鉄則です。特に国際的なM&Aを行う場合、経営層が買収・合併先を「支配する」のではなく「統合する」という考え方を持つことが重要です。

 たとえば、ドイツ株価指数(DAX)の主要30企業のうち、ほとんどの企業の経営陣の構成が2.5カ国以上となっています。日本企業では、ほとんどの企業の経営陣が日本人のみで構成されています。やはりトップレベルで多様性を尊重し、様々な考え方を取り入れようとしているかどうか、というのはM&Aを成功させる上で大切なポイントです。

 もう1つのポイントは、M&Aをする際、統合するのはコスト削減につながる部分や、技術的市場的な意味でのシナジーを出していくために関係がある部分のみで、それらに関係のない部分は無理に統合しようとせず、独立性を保ってあげることです。

 私の知る限り、日本やアメリカの企業は中央集権的な経営をしがちですが、ヨーロッパ、特にドイツ企業はうまく権限移譲を行います。そのためか、関係構築が難しいと思われている中国企業とも比較的うまくやれています。多様性を尊重し、パートナーとして受け入れ、任せるところは思い切って任せるため、ドイツ企業と地元企業のジョイントベンチャーの成功例はしばしば出ています。

――具体的には何を任せ、グリップを握るべきところはどのようにしているのでしょうか。

 中国企業と提携し、事業拡大に成功したフォルクスワーゲンがいい例かもしれません。技術革新や製品デザイン、生産方式など、競争優位の中核となる機能は、フォルクスワーゲンのやり方を守らせるようにしますが、人事やその他の機能は中国側に一任しています。経営上の意思決定のプロセスについては重視しますが、どう管理するかは重視していないのです。

 もちろん、生産性や収益力が低ければ、中国市場で生き伸びることはできません。ですから企業競争力の源となる重要な機能はしっかり掌握し、中央集権的に管理します。特に、これだけ大きな多国籍企業ともなると、財務管理、現金管理、会計システム、ITシステムなどはグローバルに統合しなければ効率が悪すぎる。逆に言えば、それ以外は統合先の企業文化を尊重し、合わせるようにするわけです。これは、中国以外の国でも、あるいは国内でM&Aを行う場合も同様です。

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