ドイツ製造業の強さのカギはどこにあるか

ローランド・ベルガー氏インタビュー(前編)

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EU(欧州連合)諸国の騒乱のなかでドイツ経済が堅調さを維持している要因のひとつは、高い国際競争力をもつ製造業にある。大企業のみならず、社員数500名以下の中小製造業までもが、アジアなど新興国へ積極的に進出し成功を収めている。ヨーロッパ系最大のコンサルティング・ファーム、独ローランド・ベルガー創業者のローランド・ベルガー氏は、訪日回数100回以上という日本通。同氏にドイツ製造業の強さの秘密と日本の製造業復活への課題について聞いた。全2回。


――日本の製造業はいくつかの企業を除いて、低迷が続いています。長らく日本をご覧になっていて、どこに問題があると思われますか。

ローランド・ベルガー
(Roland Berger)

ローランド・ベルガー創業者、名誉会長。ドイツのルードビッヒマクシミリアン経営大学院でMBA(経営学修士)取得。1967年、ローランド・ベルガー設立。2003年より会長、2010年より現職。欧州委員会や域内国家における政府専門委員などを歴任する。訪日回数は100回以上という日本通。

 まず忘れないでいただきたいのは、70、80年代、世界は日本からカンバン方式やカイゼンなど、製造について多くを学んだということです。日本人は自分たちが成し遂げてきたことに対してもっと誇りを持つべきで、過度に将来を悲観する必要はないように思います。

 現在においても、日本の技術の中には、先進性という意味で際立っているものがいくつもあります。たとえば、ハイブリッドエンジンです。実は1936年、ハイブリッドエンジンを最初に開発したのはドイツだったのですが、これを量産しビジネス展開することに成功したのはトヨタ自動車です。

 日本の製造業は、今も非常にイノベーティブであり、日本経済はイギリス、ドイツ、アメリカにも引けを取らないほど成功を収めています。まずはそのことに自信を持っていただきたいと思います。

――とはいえ、日本は今や国内市場が縮小しつつあり、特に製造業はビジネスチャンスを広げるためにグローバル展開が求められているものの、なかなかうまくいきません。ドイツ企業との違いはどこにあるのでしょうか。

 理由はいくつかあります。まず、日本企業はドイツ企業に比べて、経営を多角化する傾向が強いということです。しかしそれでは、経営資源もエネルギーも分散してしまいます。しかも成長が見込めない事業、不採算事業からの撤退を苦手としており、結果として国際的に競争力のある事業、成長が見込まれる事業に注力できていない。それが日本企業のグローバル化を妨げているように思います。国内の市場が大きく、競争が激しいからかもしれませんが、ドイツの自動車会社が他に手広く事業を持つ例はありません。

 ドイツ企業、特に中小企業は、製品分野、技術、市場を絞り込み、一点集中で事業を行います。そのほうがグローバル展開しやすいからです。ある一分野に特化して世界中に事業を展開していくことは、市場拡大のみならず、技術力を高め、コストの一元化により経営の効率化を図ることができる。「規模の経済」「範囲の経済」の恩恵が受け、なおかつスキルも備わるというわけです。

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